シンギュラリティ教徒への論駁の書

"It's tough to make predictions, especially about the future." - Yogi Berra

書評:来世としての『全脳エミュレーションの時代』(ロビン・ハンソン)

全脳エミュレーションの時代(上):人工超知能EMが支配する世界の全貌 作者: ロビン・ハンソン,井上智洋,小坂恵理 出版社/メーカー: エヌティティ出版 発売日: 2018/03/01 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 全脳エミュレーション…

未来予測をどう読むか

これから先の記事で、カーツワイル氏による過去の将来予測を取り上げ、彼の「収穫加速の法則」を元にした予測の精度を検証してみたいと考えています。ただし、本題に入る前に、未来予測の検証において、注意しておくべきことを挙げたいと思います。(これには…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2019年

以下の引用は、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、20年後 (2019年) の将来予測です。 予測の評価結果は、以下の記事をご覧ください。 コンピュータ コンピュータはほとんど…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2009年 (2)

以下の引用は、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、10年後 (2009年) の将来予測の後半部分です。 予測の詳細な検証は、後の記事をご覧ください。 ビジネスと経済 ときおり修…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2009年 (1)

以下の引用は、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、10年後 (2009年) の将来予測の前半部分です。 予測の詳細な検証は、後の記事をご覧ください。 コンピュータ 時は2009年。…

翻訳:シリコンバレーのシンギュラリティ大学はいくつかの深刻な現実の問題を抱えている

この文章は、Bloomberg Businessweekの記事、"Silicon Valley’s Singularity University Has Some Serious Reality Problems" の翻訳です。 シリコンバレーのシンギュラリティ大学はいくつかの深刻な現実の問題を抱えている Googleからの資金供給の喪失、暴…

カーツワイル氏の予測的中率は本当に86%なのか?

カーツワイル氏は、1990年代から未来予測を発表しているため、一部の予測の期限は既に到来しています。彼の予測手法は、直近の過去におけるテクノロジーの進歩のトレンドを、未来へと外挿するという手法です。それゆえ、カーツワイル氏が過去に発表した予測…

カーツワイル氏の不老不死に関する何度も何度も外れた予言

カーツワイル氏は、20年後には人類の平均寿命は100歳を超え、30年後には120歳を超えると主張しています。 ただし、これは1999年の『スピリチュアル・マシーン』の中の予測です。つまり、ここで言われている「20年後」は2019年、「30年後」とは2029年を意味し…

予測をするのは難しい。未来についてはなおさらだ。

ニューヨークヤンキースの偉大な監督ヨギ・ベラ (大リーグの長嶋茂雄さんみたいな人) が言う通り、予測をするのは難しく、特に未来についての予測はなおさら難しいものです。未来予測は、ほとんど外れます。これは、よく指摘される「30年以内に石油が枯渇す…

翻訳:ロドニー・ブルックス氏の将来予測

この記事は、ロドニー・ブルックス氏が自身のブログで発表した記事、"My dated predictions"の抄訳です。文意の変わらない範囲で意訳および省略、要約している部分があります。原文もご覧ください。 目次 私の将来予測 予測のルール 簡単なことと困難なこと …

まとめ —シンギュラリティ教徒への論題—

ここまで、約7か月間(!)に渡って、主にカーツワイル氏の主張するシンギュラリティ論の根拠について検証してきました。このブログ、『シンギュラリティ教徒への論駁の書』で取り上げた論点は、非常に多岐に渡っています。けれども、私のシンギュラリティに…

フェルミのパラドックスに対する最もシンプルな答え

引用元:Hubble Space Telescope Images | NASA カーツワイル氏によれば、知的生命体がシンギュリティを迎えた後、機械と融合した知性が光速ないし亜光速、もしくは超光速で宇宙へと拡大していき、宇宙が「精霊」で満たされると言われています。この「予測」…

カーツワイルの「宇宙の覚醒」とは何か

引用元:Hubble Space Telescope Images | NASA 人類がシンギュラリティを迎えた後、カーツワイル氏は、機械と融合した人類の知性が光速 (ないし亜光速)であらゆる物質を計算装置に変化させながら、宇宙へ拡大していくと述べています。そして、いずれは宇宙…

書評:『Deep Learning with Python』は、人工知能と人間の知能への深い洞察を含んだ良書だった

Deep Learning with Python 作者: Francois Chollet 出版社/メーカー: Manning Pubns Co 発売日: 2017/12/22 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 本書は、Kerasを用いたディープラーニングの基礎への入門書です。著者のフランソワ・ショレ…

「人工知能」は人間の利害対立を解決できるか

既に述べてきた通り、たとえ超人的な人工知能が作られたとしても、科学やテクノロジーがすぐに超越的な進歩を遂げるわけではなく、また既に存在する物理的な資本を更新するためには時間とコストを要するため、シンギュラリティ論において想定されているよう…

社会の慣性の法則:変化には長い時間を要する

シンギュラリティ論においては、ひとたび人間を超える人工知能が作られると、その人工知能は自身の知能を再帰的に指数関数的に成長させるのみならず、物質的貧困や紛争といった社会のさまざまな問題までもたちどころに解決できると主張されています。 この種…

思考主義批判:知能は問題解決のごく小さな部分に過ぎない

シンギュラリティ論、特に知能爆発説のシンギュラリティ仮説においては、ひとたび人間を超える人工知能が作られると、その人工知能は自身の知能を再帰的に指数関数的に成長させることができると主張されています。 更には、その超人的人工知能は、自身の知能…

翻訳:AlphaZeroは本当にAI分野の科学的ブレークスルーなのか?

この記事は、Google社の博士研究員であるJose Camacho Collados氏がサイトMedium上で公表した "Is AlphaZero really a scientific breakthrough in AI?" の翻訳です。 AlphaZeroは本当にAI分野の科学的ブレークスルーなのか? おそらくご存じの通り、DeepMin…

分子ナノテクノロジー

ここまでのナノテクノロジーに関する議論において、私は「分子ナノテクノロジーはそもそも可能なのか」という議論を避けてきましたが、このビジョンの実現可能性を改めて検討してみたいと思います。 確かに、我々は、ごく限られた状況において、個々の分子の…

リスクアセスメントの特異点 無限大x微小値問題あるいはパスカルの賭け (2)

リスクアセスメントの考え方について議論した前回の記事で、私の議論は『パスカルの賭け』をベースにしていることを述べました。そこで、今回はリスクマネジメントと意思決定理論の観点から見た『パスカルの賭け』について検討してみたいと思います。 パスカ…

リスクアセスメントの特異点 無限大x微小値問題あるいはパスカルの賭け (1)

以前の記事で、私は遠い将来の不確かな未来予測に対して、リスクマネジメントの考え方を適用することを批判しました。 この論点は重要だと考えるので、再度、該当する議論をまとめておきます。 標準的なリスクマネジメントの方法論において、「リスク」とは…

翻訳:シンギュラリティは来ない 〜進歩の速度に関して

この文章は、Google社のソフトウェアエンジニア、機械学習研究者 François Chollet氏が、2012年にサイトSphere Engineeringのブログで公開したエッセイ "The Singularity is not coming On the speed of progress" の翻訳です。なお、原文はリンク切れのため…

翻訳:知能爆発の不可能性

この文章は、Google社のソフトウェアエンジニア、機械学習研究者 François Chollet氏がサイトMedium上で公開したエッセイ "The impossibility of intelligence explosion" の翻訳です。 知能爆発の不可能性 1965年、I.J.グッドは、人工知能 (AI) に関連して…

グレイ・グーとシンギュラリティのリスクマネジメント論

シンギュラリタリアンやトランスヒューマニストが (分子) ナノテクノロジーの重要な応用先としてみなしているのは、医療分野であるということをこの連載の最初に述べました。 そこでは、分子スケールで動作するナノマシンを体内に注入することによって、たと…

人工知能とサイエンスフィクション

前回のエントリでは、ナノテクノロジー概念の起源を探っていく中で、その系譜がサイエンスフィクションと魔術へと辿れることを指摘しました。 そして、ここで私が問題にしている人工知能とシンギュラリティ論の起源が、サイエンスフィクションに由来すること…

ナノテクノロジーの奇妙なオカルト的起源

ナノテクノロジーについての歴史が書かれる際には、遡及的に、物理学者リチャード・ファインマンによる1959年の講演『底にはたっぷり空きがある』から始められる場合が多いようです。 けれども、概念としてのナノテクノロジーの起源はもう少し以前にまで遡り…

分子ナノテクノロジーの予測とナノハイプ

私は、カーツワイル氏によるナノテクノロジーに関する予測は、もはや議論に値するものであるとは考えていません。『ポスト・ヒューマン誕生』におけるナノテクノロジーに関する予測が既に外れていることはほぼ明らかであり、現在ですら議論が古びており、そ…

ナノテクノロジーとは何か

ナノテクノロジーとは、物質をナノメートルの単位、すなわち、十億分の一メートルという原子や分子の単位で扱う技術の総称です。つまり、微小スケールを対象とする量子物理学、材料化学、分子生物学、および機械的加工技術、計測技術などにまたがる学際的な…

製薬業界の反特異点

新薬の開発は、2329年には完全に停止します。 製薬業界の研究開発コストに対するリターンは、過去60年間、定常的に指数関数的に低下し続けてきました。シェフィールド大学物理学科教授リチャード・ジョーンズ氏によると、西暦2339年には1件の新薬開発に要す…

遺伝子改造によるトランスヒューマン誕生

近年のシンギュラリティに関する議論ではほとんど注目されることはありませんが、ヴァーナー・ヴィンジ氏が1993年に提唱したシンギュラリティ論においては、いわゆる汎用人工知能の発明以外にも、薬剤や遺伝子工学による人間の知能増強が、シンギュラリティ…