シンギュラリティ教徒への論駁の書

“Anyone who believes that exponential growth can go on forever in a finite world is either a madman or an economist.” - Kenneth Boulding

シンギュラリタリアンの認知的不協和と合理化

前回、「認知的不協和の理論」および、その不協和を解消する「合理化」について説明しました。 現在のカーツワイル氏とシンギュラリタリアンの議論においてさえ、「テクノロジーの発展が指数関数的ではない」という現実を合理化する議論の存在を指摘できます…

感想文: AI vs. 教科書が読めない子どもたち

「東ロボくんプロジェクト」と「リーディングスキルテスト(RST)」で一躍時の人となった感のある新井紀子氏の新刊。 AI vs. 教科書が読めない子どもたち 作者: 新井紀子 出版社/メーカー: 東洋経済新報社 発売日: 2018/02/02 メディア: 単行本 この商品を含む…

シンギュラリタリアンの『予言がはずれるとき』

これまでの記事で、私は現時点で既にカーツワイル氏の予言の大部分が外れていることを示しました。 今後、時間が経過するにつれて、ますます多くの予言が外れていることが明白となり、2040年、2050年代になっても「シンギュラリティ」なる事象が到来しないこ…

責任ある未来予測

ここまで、私はカーツワイル氏が約20年前に述べた未来予測を評価してきました。 私個人の評価によれば、出版から10年後の予測は正答率55%、20年後については22%という結果でした。比較的短期の予測にはそこそこの正答率を示している一方で、長期トレンドにつ…

翻訳:レイ・カーツワイルのあいまいな未来予測

この文章は、アメリカン・サイエンティスト誌の元編集長ジョン・レニー氏が、2010年11月にIEEE Spectrumのサイト上で発表したエッセイ"Ray Kurzweil’s Slippery Futurism"の翻訳です。 レイ・カーツワイルのあいまいな未来予測 今日、もしも自分のコンピュー…

カーツワイル氏の将来予測についての考察

以前の2つの記事で、私は1999年時点でのカーツワイル氏による2009年、2019年の予測を検討しました。 全体を通して予測の印象を述べると、以下の通りです。 コンピュータ関連のテクノロジー自体に関する予測は先見の明がある テクノロジーの使われ方に関する…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2019年 (結果)

こちらは、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、20年後 (2019年) の将来予測の検証です。本文は、以下の記事をご覧ください。 概要 注意事項 予測文の区切りは、意味の区切り…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2009年 (結果)

こちらは、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、10年後 (2009年) の将来予測の検証です。本文は、以下の記事をご覧ください。 概要 注意事項 予測文の区切りは、条件を合わせ…

書評:来世としての『全脳エミュレーションの時代』(ロビン・ハンソン)

全脳エミュレーションの時代(上):人工超知能EMが支配する世界の全貌 作者: ロビン・ハンソン,井上智洋,小坂恵理 出版社/メーカー: エヌティティ出版 発売日: 2018/03/01 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 全脳エミュレーション…

未来予測をどう読むか

これから先の記事で、カーツワイル氏による過去の将来予測を取り上げ、彼の「収穫加速の法則」を元にした予測の精度を検証してみたいと考えています。ただし、本題に入る前に、未来予測の検証において、注意しておくべきことを挙げたいと思います。(これには…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2019年

以下の引用は、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、20年後 (2019年) の将来予測です。 予測の評価結果は、以下の記事をご覧ください。 コンピュータ コンピュータはほとんど…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2009年 (2)

以下の引用は、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、10年後 (2009年) の将来予測の後半部分です。 予測の詳細な検証は、後の記事をご覧ください。 ビジネスと経済 ときおり修…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2009年 (1)

以下の引用は、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、10年後 (2009年) の将来予測の前半部分です。 予測の詳細な検証は、後の記事をご覧ください。 コンピュータ 時は2009年。…

翻訳:シリコンバレーのシンギュラリティ大学はいくつかの深刻な現実の問題を抱えている

この文章は、Bloomberg Businessweekの記事、"Silicon Valley’s Singularity University Has Some Serious Reality Problems" の翻訳です。 シリコンバレーのシンギュラリティ大学はいくつかの深刻な現実の問題を抱えている Googleからの資金供給の喪失、暴…

カーツワイル氏の予測的中率は本当に86%なのか?

カーツワイル氏は、1990年代から未来予測を発表しているため、一部の予測の期限は既に到来しています。彼の予測手法は、直近の過去におけるテクノロジーの進歩のトレンドを、未来へと外挿するという手法です。それゆえ、カーツワイル氏が過去に発表した予測…

カーツワイル氏の不老不死に関する何度も何度も外れた予言

カーツワイル氏は、20年後には人類の平均寿命は100歳を超え、30年後には120歳を超えると主張しています。 ただし、これは1999年の『スピリチュアル・マシーン』の中の予測です。つまり、ここで言われている「20年後」は2019年、「30年後」とは2029年を意味し…

予測をするのは難しい。未来についてはなおさらだ。

ニューヨークヤンキースの偉大な監督ヨギ・ベラ (大リーグの長嶋茂雄さんみたいな人) が言う通り、予測をするのは難しく、特に未来についての予測はなおさら難しいものです。未来予測は、ほとんど外れます。これは、よく指摘される「30年以内に石油が枯渇す…

翻訳:ロドニー・ブルックス氏の将来予測

この記事は、ロドニー・ブルックス氏が自身のブログで発表した記事、"My dated predictions"の抄訳です。文意の変わらない範囲で意訳および省略、要約している部分があります。原文もご覧ください。 目次 私の将来予測 予測のルール 簡単なことと困難なこと …

まとめ —シンギュラリティ教徒への論題—

ここまで、約7か月間(!)に渡って、主にカーツワイル氏の主張するシンギュラリティ論の根拠について検証してきました。このブログ、『シンギュラリティ教徒への論駁の書』で取り上げた論点は、非常に多岐に渡っています。けれども、私のシンギュラリティに…

フェルミのパラドックスに対する最もシンプルな答え

引用元:Hubble Space Telescope Images | NASA カーツワイル氏によれば、知的生命体がシンギュリティを迎えた後、機械と融合した知性が光速ないし亜光速、もしくは超光速で宇宙へと拡大していき、宇宙が「精霊」で満たされると言われています。この「予測」…

カーツワイルの「宇宙の覚醒」とは何か

引用元:Hubble Space Telescope Images | NASA 人類がシンギュラリティを迎えた後、カーツワイル氏は、機械と融合した人類の知性が光速 (ないし亜光速)であらゆる物質を計算装置に変化させながら、宇宙へ拡大していくと述べています。そして、いずれは宇宙…

書評:『Deep Learning with Python』は、人工知能と人間の知能への深い洞察を含んだ良書だった

Deep Learning with Python 作者: Francois Chollet 出版社/メーカー: Manning Pubns Co 発売日: 2017/12/22 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 本書は、Kerasを用いたディープラーニングの基礎への入門書です。著者のフランソワ・ショレ…

「人工知能」は人間の利害対立を解決できるか

既に述べてきた通り、たとえ超人的な人工知能が作られたとしても、科学やテクノロジーがすぐに超越的な進歩を遂げるわけではなく、また既に存在する物理的な資本を更新するためには時間とコストを要するため、シンギュラリティ論において想定されているよう…

社会の慣性の法則:変化には長い時間を要する

シンギュラリティ論においては、ひとたび人間を超える人工知能が作られると、その人工知能は自身の知能を再帰的に指数関数的に成長させるのみならず、物質的貧困や紛争といった社会のさまざまな問題までもたちどころに解決できると主張されています。 この種…

思考主義批判:知能は問題解決のごく小さな部分に過ぎない

シンギュラリティ論、特に知能爆発説のシンギュラリティ仮説においては、ひとたび人間を超える人工知能が作られると、その人工知能は自身の知能を再帰的に指数関数的に成長させることができると主張されています。 更には、その超人的人工知能は、自身の知能…

翻訳:AlphaZeroは本当にAI分野の科学的ブレークスルーなのか?

この記事は、Google社の博士研究員であるJose Camacho Collados氏がサイトMedium上で公表した "Is AlphaZero really a scientific breakthrough in AI?" の翻訳です。 AlphaZeroは本当にAI分野の科学的ブレークスルーなのか? おそらくご存じの通り、DeepMin…

分子ナノテクノロジー

ここまでのナノテクノロジーに関する議論において、私は「分子ナノテクノロジーはそもそも可能なのか」という議論を避けてきましたが、このビジョンの実現可能性を改めて検討してみたいと思います。 確かに、我々は、ごく限られた状況において、個々の分子の…

リスクアセスメントの特異点 無限大x微小値問題あるいはパスカルの賭け (2)

リスクアセスメントの考え方について議論した前回の記事で、私の議論は『パスカルの賭け』をベースにしていることを述べました。そこで、今回はリスクマネジメントと意思決定理論の観点から見た『パスカルの賭け』について検討してみたいと思います。 パスカ…

リスクアセスメントの特異点 無限大x微小値問題あるいはパスカルの賭け (1)

以前の記事で、私は遠い将来の不確かな未来予測に対して、リスクマネジメントの考え方を適用することを批判しました。 この論点は重要だと考えるので、再度、該当する議論をまとめておきます。 標準的なリスクマネジメントの方法論において、「リスク」とは…

翻訳:シンギュラリティは来ない 〜進歩の速度に関して

この文章は、Google社のソフトウェアエンジニア、機械学習研究者 François Chollet氏が、2012年にサイトSphere Engineeringのブログで公開したエッセイ "The Singularity is not coming On the speed of progress" の翻訳です。なお、原文はリンク切れのため…