シンギュラリティ教徒への論駁の書

"Enjoying science fiction is not the same thing as doing science or making science policy." - Dale Carrico

翻訳:ロドニー・ブルックス氏の将来予測

この記事は、ロドニー・ブルックス氏が自身のブログで発表した記事、"My dated predictions"の抄訳です。文意の変わらない範囲で意訳および省略、要約している部分があります。原文もご覧ください。

目次

私の将来予測

あらゆる新しいテクノロジーには、人類にとってどの程度良いものになるのか、または悪いものになるのかという予測が付きまとう。私が眼にしてきたよくある脅威は、新しいテクノロジーのコンセプトデモンストレーションの後、現実に実用化されるまでの期間が過少評価される傾向にあるということだ。私の以前の記事『AIの未来予測に関する7つの大罪*1の中で、7番目の誤りとして指摘した通りである。

たとえば、初期のインターネットに対するテクノ・ユートピア主義では、インターネットを通じた素晴しい世界の実現を予想する主張があった。しかし、結局は予期された通りには進まず、予測は残念な結果を迎えた。そして、予測された輝かしい未来が実現するまでに、いかに長い時間を要するかについて議論が起こっている。テクノロジーの誕生期における楽観主義は、大抵このような道を辿る。

過去数ヶ月に渡って、現状の人工知能(AI)と機械学習(ML)に関するハイプと思われる主張に対して、私は冷や水を浴びせかけてきた。しかし、私は自分自身をテクノロジー悲観主義者だとは考えていない。むしろ私はテクノロジー現実主義者なのだ。

私が思うに、新しいアイデアを思いつくことは簡単である。アイデアを実現することは難しい。アイデアを大規模に展開することは、更に困難である。そして、この観点から成功の可能性を評価することによって、テクノロジーとテクノロジーの普及に対するアイデアを、比較的簡単なものから困難なものまで並べられると考えている。

しかし、正解か誤りかに責任を負わない予想を吐き出すことは、むしろ容易なことだろう。これは何も私自身にだけではなく、物理学者から起業家、学者まで、AIやMLについて奔放な予測を述べている専門家にも当てはまる。

1年の始まりに、今年何が起こるかについて多数の予測がなされている。この機会に私自身も予測を示してみたいと思う。ただし、今年だけではなく将来32年に関する予測である。私はこの記事で、明確な時期を添えて予測を述べるつもりである。そして、私の予測はこのブログに残り続け、記事の複製はサイバースペースのどこかで誰もが閲覧することができるだろう。私は自分が述べたことに対する責任を持ち、正解か誤りかを他の人々が判断できるようにしたいと思う。もしも私がごまかしをするようなことがあれば、いくつかの私の予測は、ある時点で日付が変わったように見えるかもしれない!

私は32年間という期間を選んだが、そのとき私は95歳になっているだろう。その時には予想について議論を続けるには、私は少し歳を取りすぎていているのではないかと思う。また、32は2のべき乗であり、とても良い数字だ。そこで、私は2050年1月1日までを考慮するつもりである。つまり、この記事では今世紀の前半を予測することを意味している。

ここでは3通りの異なる方法で日付を指定する:

  • NIML つまり "Not In My Lifetime"、2050年1月1日よりも早くなることはないということを意味する
  • NET  [以降]、つまり "No Earlier Than"、その年よりも早くなることはないということを意味する
  • BY [までに]、 その年までに、ということを意味する

予測のルール

私は、予測内容と時期を非常に精緻なものにすることを試みたい。現実的には、このレベルでの正確さはほとんど不可能だろう。それにもかかわらず、私は予測に挑戦してみたいと思う。

非常に最近の経験から、私が思い知らされたことがある。人々が抱いているテクノロジーへの先入観、テクノロジーがもたらすはずの人類の繁栄に対する先入観に対して挑戦し、考えを変えさせることは困難であるということだ。私はこんなことをツイートした。(@rodneyabrooks)

次に人類が月に着陸する際には、多くの、多くの人工知能機械学習システムの助けを受けることだろう。

前回、我々はAIもMLも使わずに月へ行って帰ってきた。

このツイートの意図は、今日のAIとMLは非常に強力で有用なものではあるけれども、ものごとを遂行するための唯一の手段ではないということだ。このことは覚えておく価値があるだろう。AIやMLによって、魔法のように世界の全てが突然に変化するわけではないのだ。

私のツイートに対する返信の中で、何度も何度もリツイートされたものには、カルマンフィルタが宇宙船の軌道を計算するために使用されたという主張があった。確かにカルマンフィルタは使われていたが、それは特定のプロセスから得られた複数の[不正確な]データを元にして、データが表す真の値を精度良く推定するものであり、何らかの値を保存するなどの学習を行なわない。ゆえに、カルマンフィルタは機械学習ではない。だから、我々が前回月へ到達した際には、機械学習は使用されていない。たとえ、機械学習は全ての技術進歩の鍵であると、どれほど信じたいと望んだとしてもである。

これが、私が具体的な予測をする意図である。また、確実に、未来のある時点より以前に起きることはないと私が予測した事項について、それは既に実現していると主張する人と議論しなければならないからである。私はそんな主張をする人々が現れることを予測する!

簡単なことと困難なこと

電気自動車や再利用可能ロケットを製造することは簡単である。飛行自動車、ハイパーループシステム (あるいはパレット化された地下輸送ネットワーク) の製造は困難である。

違いは何だろうか?

自動車は、およそ1世紀以上の間量産され普及している。ガソリン車ではなく電気自動車を作りたいのであれば、発明が必要な部品はそれほど多くないが、大規模に展開する方法は考えなければならない。

フロントガラスのワイパー、ブレーキ、ホイール、タイヤ、ステアリングシステム、上下動する窓、シート、シャーシなども100年以上に渡るエンジニアリングと製造技術が存在する。デジタル運行する電車の大規模生産も、20年以上に渡る歴史がある。

大規模に、競争力がある価格で、優れた電気自動車を製造するには、洗練された技術と大資本が必要とされるかもしれない。けれども、電気自動車の製造にあたって変更しなければならないことは、恐ろしく多いというわけではない。何十年もの間、世界中の多数の人々が自動車部品を扱っており、自動車部品や製造ラインの専門家も多数存在している。

再利用可能ロケットというアイデアも革命的に聞こえるかもしれないが、ここにも先行技術と経験がある。今日のすべての液体燃料ロケットの主要な部品と機能は、ヴェルナー・フォン・ブラウンによってヒトラーのために製造されたV-2ロケットに依拠している。V-2ロケットは、高圧のターボポンプ(580馬力!)で液体燃料を噴射し、エンジン部品を冷却するために燃料を使用し、ロケット自体が液体酸素を運搬するため、大気圏外を飛行することができる。V-2ロケットはわずか75年以上前に初めて製造された。そして、[強制収容所の] 奴隷労働を用いて大量生産され、わずか2年間に5200発が生産された。

以来、世界中で20種類以上の液体燃料ロケットファミリーが開発されている。その中には50年以上の運用実績のあるロケットもある。何百という異なる種類の構成が存在し、多くのパラメータとトレードオフのバリエーションが検討されている。50歳のソユーズロケットファミリーは、発射時に20種類の液体燃料をスラストチャンバー内で燃焼させる。デルタロケットファミリーのデルタIVヘビー型は、本質的に同一のコアを水平に並べている。そのコアは全てが先行するデルタIVの第一段階である。

ジェットエンジンスラスタを利用した地球上でのソフトランディングの技術は、1950年代からロールスロイス社の「フライング・ベッドステッド(空飛ぶ寝台)」を中心として行なわれてきた。その後、より大規模に、ハリアー戦闘機が垂直離着陸を実現している。1960年代に開始された有人月面着陸には、大気の無い環境での垂直離陸用ロケットエンジンが利用されていた。

今日のファルコンロケットは、打ち上げ場所やロケット回収船に帰還する際の第一段階で、グリッドフィン [折りたたみ式の垂直翼] を用いる。グリッドフィンは1950年代ロシアでSergey Belotserkovskiyによって開発され、1970年以来多くのミサイル、弾道ミサイル、誘導爆弾、巡航ミサイル、そして有人のソユーズカプセルの緊急脱出システムに使用されてきた。ロケットの開発には巨額の資金が投じられており、多くの有用な技術、多くのノウハウ、多数の飛行経験に繋がっている。

つまりは、ある程度の規模で電気自動車や再利用可能ロケットを開発することは、無謀で、困難な、信じがたいほどに独創的な仕事ではないということだ。むしろ、先行するたくさんの実績の上に構築されるものであるため、成功する可能性が高いと考えられる。そこには経験があるのだ。全ての問題にではないにせよ、ロケット開発に関する多くの、多くの問題には既知の解決策が存在する。一見革命的に見えるコンセプトも、改善的なアイデアをもとにした、多くの真剣で賢明な思考から生じるものであり、もちろんそれを実行に移す勇気と決断が必要となる。

そこで、これらのテクノロジーが技術的に実現され大規模に展開可能になるまでの期間を、ある程度の自信を持って見積もることができる。ところが、完全に新しいアイデアの場合は、展開可能になるまでの時間を予測することは難しくなる。

1950年代以降、核融合発電所建設に関する実際上の問題に取り組むプロジェクトが継続されている。我々は、持続的な核融合が「機能する」ことを知っている。核融合によって太陽と他の全ての星々が輝いているのだから。そして、65年前には、人類は最初の熱核爆弾「アイビー・マイク」によって、短時間の核融合反応を生み出している。しかし、人類は未だに核融合を爆発以外の目的に使用する方法を見つけだしていない。私が思うに、もはや多くの人々は核融合発電の実現時期についての予測を信じないだろう。これは本当に難しい問題だから。

ハイパーループ*2のコンセプトは、複数のスタートアップの関心と投資を集めている。実運用以前に、実証された類似のコンセプトすら全く存在しないのにもかかわらずである。数百マイルにも及ぶ超安定したシリンダーを開発する方法に加えて、カプセルの気密性、乗降車の方法、駅以外で異常停止した際の脱出手続き、カプセルとの通信、安全性のための座席とベルト、窓のない密閉空間における移動中のユーザエクスペリエンス、経路の土地権利、地震からの保護、保険と運賃設定、などを考慮し開発しなければならない。

ハイパーループの全ての構成要素について、極めて多くの新しいテクノロジーと、新しい設計開発を必要とするだろう。上記の全てはこれまで存在していなかったものであり、実証もされておらず、それどころか今日解決するべき課題として取り上げられてすらいない。全ての問題を把握し、安定したシステムを構築し、あらゆるコンポーネントに必要なエンジニアリングを施すには、長い時間を要する。更には、全ての技術的課題が解決されたとしても、利用者の心理的抵抗があるため普及までには長い時間を要するだろう。

したがって、今後32年間に何件かの大きなデモンストレーションがあるかもしれないものの、前述のタイムフレームの中では、商業的に成立する顧客輸送システムとしてのハイパーループは存在しないだろうと私は確信している。

さまざまなイノベーションの時期を予測するために、このフレームワークを使用する。あるアイデアが、未だ研究室の中ですら実証されていない場合、たとえ理論上問題の無いものであったとしても、その実現までには長い、長い時間を要する。プロトタイプが実証されているだけの場合も、実現までにはやはり長い時間を要する。同種のテクノロジーが既に普及しており、必要となるのは既存の改善のみである場合は、普及までにあまり時間を必要としないかもしれない。しかし、その場合でも、誰もそのテクノロジーを利用したいと思わないかもしれない。そうであれば、開発に携わる技術者がどれほどの熱意を持っていたとしても、普及は進まないだろう。

テクノロジーの採用について

新しいテクノロジーの採用には、予想よりもはるかに長い時間を要する。今日のインターネットでは32ビットのアドレスが使用されているため、ネットワーク上のデバイス合計で40億の一意のアドレスしか使用できない。このプロトコルIPv4インターネットプロトコル バージョン4と呼ばれている。1990年代初頭までには、あらゆるデバイスがネットワークに参加するようになり(個人用デバイスだけではなく、電気メータ、工業用センサ、交通センサや制御装置、テレビ、電灯のスイッチ(!) などなど)、世界のアドレス空間は不足すると考えられていた。

1996年には、新しいプロトコルIPv6インターネットプロトコルバージョン6が定義された。アドレス空間は32ビットから128ビットに増加し、7.9x10^28個のデバイスをネットワークに搭載することが可能となる。

1996年以来、ネットワーク上のトラフィック全てがIPv4ではなくIPv6を使用する目標時期について、様々な日付が設定されてきた。2010年には、目標日は2012年だった。しかし、2014年には、ネットワークトラフィック全体の実に99%がIPv4を使用し続けていた。多くのエッジシステムが、洗練された方法で40億以上のデバイスを40億個のアドレス空間につめ込んでいたのだ。2017年の終わりまでに、IPv6上を流れるネットワークトラフィックは、計測方法によって2%以下から20%を超える程度の範囲に留まっている。IPv6が完全に採用されるまでには、未だほど遠い。

技術的には、IPv6の採用を阻害する問題は存在しない。それどころか、その逆の状況である。[多くの企業や団体がIPv6の導入と採用を推進している] しかし、インターネットへの接続を望むデバイスの数が増加するに従って、IPv6が採用されるのではなく、逆にIPv4を延命させるための巧妙なイノベーションと回避策も増えていったのである。
この記事での予測に使うつもりのヒューリスティック手法 (装備の代替速度、技術的ソリューションの成熟度、技術の結果に対する真の需要) を適用してみると、私は2010年ごろまでにはIPv6が広く普及すると予測してしまっていたことだろう。私は過度に楽観的だったということになる。

「常に想像よりも長い時間がかかる」ということについて

Space X社は、2011年4月にFalcon Heavyロケットを公表し、2011年6月にはカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地で事業を開始した。そして当時、初飛行は2013年に計画されていた。ロケットは、2017年12月28日に初めてフロリダ州ケネディ宇宙センターの発射台39Aに移動され、現在のところ、2018年中の初飛行を予定している。これまでのところ、開発期間は2年から7年に延長されている。

常に想像よりも長い時間がかかるものである。

自動運転車に関する予測

下記の表の最初3つの項目は、空飛ぶ車に関するものである。私は、実用的な飛行車は、飛行中のほとんどの間自動運転する必要があると考えている。そのため、飛行車もこのカテゴリに含めている。飛行車 (flying car) とは、自動車が走行可能な場所はどこでも走行でき、飛行も可能な乗り物を意味している。でなければ、車とは呼べないだろう。飛行車に乗る人間は、パイロットの免許は必要としないものの、数時間程度の特別な訓練が必要となるかもしれない。[特別な装備は必要なく、] オフィスで着るのに相応しい程度の普通の服を着て乗り込むことができ、ほとんどの行程を飛行して、100マイルでも移動可能な乗り物であるとする。特別な飛行計画の設定や登録は要求されず、必要な操作はせいぜいスマートフォン上の地図アプリを使って目的地までの道順を検索する程度ものであるとする。つまりは、追加の訓練を除けば、今日の一般人が旧来型の自動車で100マイル移動することと同じ程度のものであるということだ。

それでは自動運転車について話そう。私は、2017年の初めに無人車について2つのブログ記事を書いた。最初の記事は、自動運転車による予期しない帰結について語ったものである。歩行者や他のドライバーは、有人自動車と無人車とでは異なった形でインタラクションする。そして、無人車は他の人間からの反社会的な行動を誘発することもある。また、自動運転車の所有者は、従来型の自動車を運転する場合には絶対に行なわないような行動を取る場合があり、時として反社会的な行動をする可能性があると指摘した。次の記事では、都市の環境において自動車が遭遇する可能性のある、特殊な事例について取り上げた。たとえば、運転手が読み取らなければならない一時的な標識 [道路工事の際の通行止めの看板など]、法律の字義通りの意味に従っていては走行できない場合 [通行止め回避のために一方通行の道路を逆走するなど]、タクシーなどの運送サービスがどの程度まで乗客にコントロールを許可するかという問題、パトカーやレッカー車と無人車との通信、規則や権威の無い状況での他の人間とのコミュニケーションなどである。

私には明白だと思えるのだが、無人自動車は、通常の自動車から単に運転者を除いただけのものではない。そうではなく、無人車は、異なる使用方法をされ、世界の中で異なる位置を占める、根本的に異質な存在となるだろう。

馬のない馬車は、単に馬が引く馬車を一つ一つ置き換えていったわではない。舗装道路という新しいインフラストラクチャ、完全に新しい所有権のモデル、完全に異なる利用モデル、完全に異なる燃料とメンテナンス手法、別種の搭乗者死亡率、異なるレベルの利便性などを、自動車は必要とした。そして、究極的には郊外という非常に異なる都市構造を生み出した。

一般的な解釈では、無人車は人間が乗った自動車を単に1台1台置き換えていくものであると考えられているようだ。私は、そんなことが起こるとは考えていない。我々の都市の側が変更を受け、無人車用の特別車線、無人車と有人車を分離するジオフェンシング [仮想的な柵]、乗降車場所の自由度に対する規範の変更、駐車違反の規則の変更などがなされるだろう。我々の都市に対してあらゆる種類の小さな段階的変更が行なわれるだろう。

しかし、まずは無人車の普及速度について話そう。

7つの大罪』に関する記事の中で私が指摘した通り、1987年にはドイツで自動運転の実証実験が行なわれている。もちろん車内には人間が乗っていたものの、運転はしていなかった。過去30年の研究を通して、自動車が公道を自動走行する能力が向上したことは確かであるが、ほとんどの研究は走行に関するものであった。[他の自動車や歩行者との] インタラクション、乗降車、他のサービスや規制、車内の乗客とのインターフェイスなどに関する研究はごく僅かである。これら全てのことが、自動運転の実現には重要である。

ある意味では、過去30年の間には、非常に、非常に、非常に遅々とした漸進的な進歩しか見られなかった。自動走行というごく狭い領域の問題に注力していたにもかかわらずである。アリゾナ州フェニックスで、本当に誰も乗っていないWaymoの自動車を見かけるようになったのは、ここ数週間程度のことでしかない。

けれども、普及までには未だ道半ばである。センサの価格は更に低下する必要があり、自動車と歩行者のインタラクションに関するあらゆる運用上の問題も解決される必要があり、それ以前に、実環境における法規制と事故時の責任に関する規則が制定される必要があるだろう。いくらかの制約は残るものの、最終的にはこれらの問題は解決されると考えている。しかし、解決までの時間は、多くの人が予期するよりも遅いものとなるだろう。 無人車の可能性が真に試されるのは、試験やデモンストレーションではなく、無人タクシーやライドシェアリング事業や無人駐車場のオーナーが、エンドユーザから何らかの利益を得たときである。これは、徐々に、地理的に限られた範囲の市場でしか起こらないだろう。以下に記した私の予測におけるマイルストーンは、デモンストレーションではなく持続可能なビジネスの可能性に関するものである。そうでなければ、無人車の普及は決して離陸することはないだろう。 私が考えるに、現実に無人車が採用される方法は、無人車だけ存在し特定の走行だけが許可される区画を区切って、その近辺では人間が運転する自動車が存在しない環境で行われるというものだ。更に言えば、無人車の使用は、最初のうちは、ある都市または都市の中の一区域に限定されるだろう。そして、おそらく、一日のうちの特定の時刻、特定の気象条件下に限定されることもあるかもしれいない。つまりは、しばらくの期間、最初の無人車による移動サービス(現在のUberLyftのようなサービス)は、時々しか自動走行モードでしか動作せず、それ以外の時には人間の運転手を必要とするだろう。

 

予測(自動運転車) 時期 コメント
十分なお金があればアメリカ市民は誰でも空飛ぶ車を買えるようになる 2036年以降 2050年になるまで実現しない可能性も高い
空飛ぶ車はアメリカの総自動車台数の0.01%に達する 2042年以降 現在の総自動車台数から言えば約26,000台
空飛ぶ車はアメリカの総自動車台数の0.1%に達する NIML  
高速道路上で、真に自動運転モードの自動車のみが走行できる専用車線が作られる 2021年以降 これは、今日のHOVレーン[乗合レーン]と似たものである。私の予想では、サンフランシスコ・シリコンバレー間の国道101号線の最左車線だろう。(現在のところ、いずれの場合でもほとんどが高スピードのテスラ車の領域である)専用車線に入るまでは、人間が運転する必要がある。
自動車同士が通信でき、人間が運転する車よりも車間距離を詰められ、制限速度が高い専用車線 2024年以降  
アメリカの主要都市における最初の無人"タクシー"サービス。乗降車場所は指定され、天候と時刻に制限がある 2022年以降 乗降車場所は駐車場ではないが、バス停のようにマークされ、それ以外の目的には使用できない
アメリカの10大都市において、時々は人間の運転手が運転する、拡大された地理的範囲での無人"タクシー"サービス 2028年以降 予測の重要なポイントは、いつの時点でセンサが十分に安価になり、運転手付きの車を使うことよりも、この種のセンサを利用することが経済的に意味を持つようになるかである
上記の"タクシー"サービスがアメリカ最大の100都市のうち50都市で利用されるようになる 2028年以降 これは非常に遅いスタートと普及速度となるだろう。指定された乗降車ポイントは複数の企業によって使用され、相互の通信によって自動車の入出庫をスケジューリングされる
アメリカの主要都市の非常に限られた地域で、専用の無人貨物配送車が利用される 2023年以降 道路の幅が十分に広く、他のドライバーが停止した無人車を避けて通行できる地域でなければならない
特定車種の自動車を入口に停めると、人間が存在しない環境の駐車場で車が自動で停車を行うような(利益を上げられる) 駐車場 2023年以降 経済的なインセンティブは、駐車密度の向上である。また、これには自動車と駐車場インフラ間の通信を必要とするだろう
アメリカ主要都市における無人"タクシー"サービス 地理的な範囲は限定されていても、任意の場所で乗降車が可能である 2032年以降 これはUberLyftや現在のタクシーサービスが今日可能なことである
マサチューセッツ州キャンブリッジポートニューヨーク州グリニッジビレッジにある全ての道路で無人タクシーサービスが運用される 2035年以降 それ以前に路上駐車と人間の運転者がこのエリアで禁止されていない限りは。
1つの主要都市の大部分で路上駐車と人間の運転する自動車が禁止され、そのエリア内では自動運転車が自由に走行できる 2027年以降
2031年までに
これは自動運転車へと向かう潮流の開始地点となる
アメリカの主要都市の中心街は上記のような規則のもとにある 2045年以降  
電気自動車は、アメリカの自動車販売数の30%を占める 2027年以降  
電気自動車は、実質的にアメリカの自動車販売数の100%を占める 2038年以降  
個人所有の自動車は地下のパレットに乗り、地下道を通って都市の別の場所へ時速100マイル以上で移動できる NIML 小さなデモンストレーションプロジェクトはあるかもしれないが、単にデモだけのものであり実現せず、有用なマス市場へのサービスにはならないだろう
ロッコ問題に対する解決策のいくつかのバージョンを装備した自動車が、実際に機能を使用する必要がある事故に初めて遭遇する NIML このバリエーションが、映画「I, Robot」のプロットの重要な側面であったことを思い出そう。そこでは、交通事故が発生した際にロボットはウィル・スミス演じるキャラクターを救い、若い少女を見殺しにするのである。

 

ロボット、AIとMLに関する予測 

「ロボットと人工知能に関する将来」についての私のブログ記事を読んできた読者は既にご存知のことと思うが、AIに熱中している人や恐怖を抱いている人々が信じているよりも、テクノロジーが現実世界で大規模に展開されるまでには時間を要するのである。 以下の予測は、AIに関する一般の認識(過去3年の間にAI分野で生じた変化のうち最大の事象)に関するもの、技術的なアイデアに関するもの、普及に関するものを含んでいる。

これらの予測はランダムで関連性のないものと感じられるかもしれない。しかし、これがロボット、AIとMLの分野における進歩の進み方なのである。突然に、人間(あるいはチンパンジー)ができること全てを上手くこなす汎用知能が出現するということはない。とても長い、長い間に渡って、単一機能のソリューションしか出現しないだろう。 人間レベルの知能と身体能力を構築することは、本当に、本当に困難である。過去5年間でほんの少しの爆発的な進歩があり、あまりに多くの人が、必要なこと全てが既に成し遂げられたと考えているようだ。現実には、我々は未だ道程の1%以下に居て、どうすれば5%へ辿り着けるのかというアイデアも存在していない。そして、私は進捗率のパーセンテージを述べたものの、この値を本当に正当化することは不可能である。もしかすると、私は進捗率を10倍以上に誇張しているかもしれない。その場合は、私は謝罪の言葉を述べたい。

 

予測(AIとML) 時期 コメント
学術界で、ディープラーニングの限界に関する疑惑が起こる 2017年までに あぁ、これは既に起きている… ペースは加速するだろう。
技術系メディアはディープラーニングの限界、ゲームプレイに対する強化学習の限界を報道し始める 2018年までに  
一般紙で、ディープラーニングの時代は終わったという話が開始される 2020年までに  
ベンチャーキャピタルは、投資には“X+ディープラーニング”以上のものが必要であると認識する 2021年までに ここでは私は少しシニカルである。もちろん、正確にこのような変化が起こる時期を予測することはできない。
AI分野で、ディープラーニングを超えた「次の大きなもの」の出現が広く認識される 2023年以降
2027年までに
これが何になるにせよ、既に研究がされており、既に関連する論文が出版されている。2023年以前にも、ディープラーニングの次の技術だという主張があるだろうが、うまく行かないだろう。
報道機関や研究者が成熟し、いわゆる「チューリングテスト」やアシモフロボット三原則を乗り越え、それらがAIやMLの進歩を測定する妥当な方法であると見なされることがなくなる 2022年以降 私は願っている。本当に。
器用なロボットハンドが一般的に利用可能になる 2030年以降
2040年までに
印象的な研究室でのデモはあったものの、実際のところ過去40年間に広く普及したロボットハンドやエンドエフェクタに進歩は見られない。
アメリカのどんな家の中でも自由に動き回れるロボット。階段、散らかった部屋、家具の間の狭い隙間なども含む

研究室デモ
 2026年以降
高価な製品
 2030年以降
手頃な製品
 2035年以降

人間にとって容易なことは、未だロボットには非常に、非常に難しい
単独のソリューションではなく、複数のタスク(ベッドからの起床、洗濯、トイレの使用など)について高齢者の身体的補助が可能なロボット 2028年以降 単独のソリューションを提供するロボットは存在するかもしれないが、すぐに高齢者の家はロボットで埋め尽くされてしまうだろう。
庭の最後10メートル程度の範囲で荷物を運ぶロボット。乗り物から荷物を受け取り、家の玄関内部までそれを運ぶ 研究室デモ
 2025年以降
一般用システム
 2028年以降
 
長期的なコンテキストを保持し、容易に認識可能な繰り返しパターンに陥ることのない会話エージェント

研究室デモ
 2023年以降
一般用システム
 2025年以降

既に会話応答システム (Google HomeAmazon Echo)が存在するため、デモから普及までの期間は速いだろう
ネズミ程度の、継続した意識を持つAIシステム 2030年以降 これを説明するためには完全に別のブログ記事が必要になる…
犬と同等に知的で、注意深く、忠実に見えるロボット 2048年以降 ほとんどの人が想像するよりも困難である--多くの人は、既に実現されていると考えている。私は全くそう思わない。
自身の存在について何らかの真の概念を持つロボット、または、6歳児と同等のレベルで人間について理解しているロボット NIML  

宇宙旅行に関する予測

幼い頃から、私は宇宙旅行のファンであった。当時、私の父は毎週アデレードからウーメラ、南オーストラリア州へと飛び、エウロパと呼ばれたヨーロッパの衛星打ち上げイニシアチブにおいて第一段階エンジンの開発に携わっていた。 数か月ごとに、金曜の夜、私は父と一緒にロケット愛好家クラブの会合に参加していた。そこでは、NASAからの最新のフィルム映像を見て、議論がかわされていた。

当時、私の生涯の夢は、いつかは他の惑星に住むことであった。これまでのところは、死ぬ前に地球を離れるという夢に向かって大きく前進している。現実的には、最終的には私の夢は果たされないだろうということが分かった。

それでは、宇宙旅行に関する私の予測を述べよう。私が望むほどには楽観的ではないが、しかし現実的なものだと思う。

 

予測(宇宙旅行) 時期 コメント
民間企業による有人弾道飛行ロケット(テストパイロットと技術者)の打ち上げ 2018年までに  
ごく一握りの消費者に対する上記の商業宇宙飛行 2020年までに  
週次以下の周期での定期的な宇宙飛行 2022年以降
2026年まで
 
周回軌道への定期的な商業飛行 2027年以降 ロシアは、かつてISSへの民間向け有料飛行を行なっていたが、8回のフライトのみ(7人の旅行者)であった。現在では無期限中断されている。
アメリカ製ロケットによる次の有人周回軌道への打ち上げ 2019年以降
2021年までに
2022年までに
(2つの企業による)
現在のスケジュールでは2018年とされている。
ファルコンヘビーロケットを用いた月周回軌道への商業飛行 2020年以降 最新の予測では2018年第4四半期である。計画通りには行かないだろう。
後に到着する人間のための、火星への貨物船着陸 2026年以降 SpaceXは2022年までにと宣言している。私は2026年という予測は楽観的であると考えているものの、実用的な理由ではなく、火星着陸が実現可能だと宣言するために追求されるかもしれない。
火星に人間が着陸し、事前に着陸した貨物船の物資を利用する 2032年以降 残念ではあるが、皆が予期するよりも長い時間を要するだろう。
最初の「恒久的な」火星上の有人基地 2036年以降 それができるならば、人類にとって魔法のように見えることだろう。我々全員にインスピレーションを与えるはずだ。
BFロケットを用いた地球上の一地点から別の地点までの輸送 NIML これは起こらないだろう。現在の我々には思いもよらない、何らかの新しく大きなブレイクスルーがなければ。
2都市間を結ぶハイパーループの定期便 NIML チャック・イェーガーマーキュリー計画を評した「肉の缶詰」という言葉を思い出さずにはいられない。*3

 

*1:訳注:MIT Technology Reviewによる和訳あり(有料)

*2:訳注:真空ないし減圧されたトンネル内を、圧縮空気の噴出により高速で移動する交通手段

*3:チャック・イェーガーは米空軍のテストパイロットで、初めて超音速飛行を行った。マーキュリー計画には批判的であった。重大事故が起きた場合には、狭いカプセルに閉じ込められたまま、搭乗者はひき肉のようになってしまうだろう、という意味。