シンギュラリティ教徒への論駁の書

“Anyone who believes that exponential growth can go on forever in a finite world is either a madman or an economist.” - Kenneth Boulding

第4章

レイ・カーツワイル『スピリチュアル・マシーン』を読んで、シンギュラリティ論への違和感の原因が理解できた

私が『ポスト・ヒューマン誕生』でのカーツワイル氏のシンギュラリティ論を読んだ時、疑問を感じたことがあります。 カーツワイルの未来予測において根幹を成す仮定は、「宇宙の"秩序"が指数関数的に加速する」という原理、「収穫加速の法則」です。一方で、…

日米シンギュラリティ論比較 知能爆発説 vs. 収穫加速説

過去数年間、日本とアメリカの (英語で書かれた) シンギュラリティ論を追っていくなかで気がついた、興味深い若干の差異があります。 アメリカのシンギュラリティ論では、知能爆発説、つまり「将来のある時点で人間を超えるシードAIが作成される。そのAIは爆…

収穫加速の法則 vs.成果増大に関するプランクの原理

科学技術の指数関数的な成長を予測する「収穫加速の法則」を支える原理として、次のような主張がされています。 「一つの重要な発明は他の発明と結びつき、次の重要な発明の登場までの期間を短縮し、イノベーションの速度を加速する。」 なるほど確かに、直…

収穫加速の幻影 補遺

これまでも度々取り上げた、カーツワイル氏が宇宙、生命と人類史の指数関数的成長を例証したと主張するアイコニックなこのグラフですが、このグラフに対する批判もまとめておきます。 そもそも、「生命」、「人類史」と「テクノロジー」を時間という単一の指…

収穫加速の幻影

カーツワイル氏は、コンピュータや機械学習などのみの単独のテクノロジーだけが指数関数的に成長すると主張しているわけではありません。そうではなく、「収穫加速の法則」に従い、「パラダイム・シフト」が発生するまでの間隔が指数関数的に短縮されており…

ムーアの法則は収穫加速の法則ではない

先日、あるシンギュラリタリアンの方とネット上で議論をする機会があったのですが、議論を通して彼らが何を考え、どのような内的な論理で「収穫加速の法則」を捉えているのかを理解できたように感じています。 そして、なぜ、これまでの私の議論がシンギュラ…

未来学者モディス氏による収穫加速の法則への批判

カーツワイル氏が宇宙、生命、人類史とテクノロジーに渡る指数関数的な成長を示した「収穫加速の法則」のグラフについて、事象の発生間隔が指数関数的に短縮されるという結論を示すため、「パラダイム」が恣意的に選択されている、という批判を既に述べまし…

収穫加速の法則批判 「恣意的なパラダイム」

カーツワイル氏の主張する宇宙の始まりからテクノロジーに至る指数関数的成長は幻影であり、このグラフは何ら意味のある内容を述べておらず、このグラフを用いて将来を予測することはできません。

収穫加速の法則批判 「減速する加速」

本エントリにおいては、「収穫加速の法則」は、「一定期間における『進歩量』の指数関数な増大」の意味で使用します。 前項で述べた、「収穫加速の法則」においてパラダイムが定義されていないという問題も無視しがたいものですが、けれども、実際のところ、…

収穫加速の法則批判 「未定義のパラダイム」

カーツワイル氏が未来を予測する根拠である「収穫加速の法則」ですが、彼がその「法則」を例証していると主張するグラフが、以下の「特異点へのカウントダウン」と名づけられたグラフです。 なお、本エントリにおいては、「収穫加速の法則」は「『パラダイム…

多義的で曖昧な「収穫加速の法則」の定義

カーツワイル氏がシンギュラリティを予測する根拠である「収穫加速の法則」ですが、彼はこの「法則」を複数の意味で使っており、非常に多義的で曖昧な、対象が定量的ではなく分かりづらい「法則」となっています。 そもそも、(シンギュラリティに関する議論…

収穫加速の法則とは何か

ここまでカーツワイル氏のシンギュラリティ論に関する議論で、あらゆるテクノロジーが指数関数的に成長しているわけではないこと、指数関数的な成長が観察されているのは、ただ情報テクノロジーの隣接分野に限られることを説明しました。 けれども、「単独の…