シンギュラリティ教徒への論駁の書

“Anyone who believes that exponential growth can go on forever in a finite world is either a madman or an economist.” - Kenneth Boulding

第9章

シンギュラリティ論を真剣に捉えて批判するべき10個の理由

シンギュラリタリアン/トランスヒューマニストはバカで間違っているとしても、バカの間違いを公然と指摘することは必ずしもバカげてはおらず、間違いでもない。 科学技術の成果の過剰誇張と将来の可能性に対する誇大広告は、現状の技術的アチーブメントの到…

論文紹介:ナノテクノロジーの20年 科学の未来をどう語るか (リチャード・ジョーンズ)

本ブログでも過去に何度か取り上げている、イギリス、シェフィールド大学の物理天文学科教授でナノテクノロジーの専門家であるリチャード・ジョーンズ氏が、過去のナノテクノロジーおよび科学技術一般の将来予測に関する論説を IEEE Nanotechnology Material…

悪しき未来学: 「人生100年時代」の根拠の怪しさについて

このシンギュラリティ懐疑論を書いている中で、特にリアル知人から受けた典型的な反応は「ごく一部の馬鹿と利害関係者を除いて、誰もそんな話信じていないでしょ」というものでした。確かに、シンギュラリタリアニズム/トランスヒューマニズム的な将来予想を…

翻訳:超知能AI神の存在確率 (デール・キャリコ)

以下は、カリフォルニア大学バークレー校の修辞学部の講師であり、批評理論家、修辞学者のデール・キャリコによる"Nicholas Carr on the Robot God Odds" の翻訳(一部抄訳)です。(私が思うに、デール・キャリコは、シンギュラリタリアニズム/トランスヒュー…

シンギュラリティは雪男である

私のシンギュラリティ懐疑論の立場は、「シンギュラリティは来ない」ではなく「シンギュラリティが来るという根拠がない」というものです。 私のこの立場については、これまでも何度か説明してきているのですが、再度整理しておきたいと思います。*1 「人間…

論文紹介:『もしとならば: ナノ倫理思考実験批判』(アルフレッド・ノルドマン)

近年の「人工知能」を取り巻く言説の興味深い点としては、テクノロジー自体やその開発の見通しよりも、テクノロジーの発展に伴う社会的・倫理的影響のほうに大きな注目と関心が集まることが挙げられます。このような、テクノロジーがもたらす影響についての…

翻訳:約束の経済

以下の文章は、イギリス、シェフィールド大学天文物理学科教授であり、ナノテクノロジーを専門とするリチャード・ジョーンズ教授が2008年に公表した文章 "Economy of Promises" の翻訳です。 なお、編集された版がNature Nanotechnology誌のサイトに掲載され…

ハイプとハイプ・サイクル

残念なことに、強調と過剰な熱意と誇張の間には違いがある。ハイプは文字通りに理解するためのものではない。 デイヴィッド・M・ベルーベ著『ナノ・ハイプ狂騒』(上巻 p.32) 新たなテクノロジーの黎明期に、「ハイプ」--過大評価と誇大広告-- が見られるとい…

ハイプとは何か?

新たなテクノロジーの出現時には、「ハイプ」 --すなわち、開発者による誇大広告と一般大衆の過剰な期待、より広く言えば、将来の可能性に対する「過大評価」と「誇張」-- またその裏返しである「恐怖」が見られます。これは何も、最近の機械学習と人工知能…

テクノ・ハイプ論 ~なぜシンギュラリティは問題か~

「シンギュラリティの主張は、はっきりとした科学的証明がなされていないという点で、認識論的に間違っている。しかしそれだけで済ますことはできない。シンギュラリティの主張は、倫理的にも非難されるべきである。シンギュラリティという特殊なシナリオを…