シンギュラリティ教徒への論駁の書

“Anyone who believes that exponential growth can go on forever in a finite world is either a madman or an economist.” - Kenneth Boulding

レイ・カーツワイルが予言した2019年はどこまで実現したのか?

この記事は、2018年3月17日に本ブログに投稿した記事を2019年2月4日に再掲したものです。備忘のため、2019年一杯はトップ表示しておきます。2020年に、改めて内容の検証を行うつもりです。

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こちらは、フューチャリストレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、20年後 (2019年) の将来予測の検証です。

本文は、以下の記事をご覧ください。


概要

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注意事項

  • 予測文の区切りは、意味の区切りに従い私が独自に定めたものです。
  • 評価は、1 (正しい)、2 (やや正しい)、3 (判定不能/判断保留)、4 (やや誤り)、5 (誤り) の5段階の主観評価です。
  • 2019年はまだ「未来」であるため、私の判定自体にも予測が含まれます。約2年後の2020年時点で、もう一度予測の成否を判定してみたいと思います 。

本文

  • 1 コンピュータはほとんど目に見えない。壁、テーブル、机、椅子、衣類、宝石、そして身体など、いたるところに組み込まれている。
    (評価) 5
    コンピュータはいたるところに組み込まれているものの、まだ目に見える。
  • 2 人々はごく普通にメガネやコンタクトレンズに組み込まれた三次元ディスプレイを使用している。この「ダイレクト・アイ・ディスプレイ」はきわめてリアルな仮想環境をつくり出し、それを「現実の」環境上に投影する。このディスプレイ技術は、人間の網膜に直接イメージを投影するものだ。そのイメージは、人間の視覚感度の限界を超えるぐらい高品位なため、視覚障害の有無とは関係なく広く利用されている。
    (評価) 5
    三次元ディスプレイは、「ごく普通」であるとは言いがたい。
  • 3 ダイレクト・アイ・ディスプレイには、つぎの3つのモードがある。
    1. ヘッド追従モード
    2. 仮想現実重ね合わせモード
    3. 現実環境遮断モード

    (評価) 1
    正しい。近年のVRディスプレイを考えると、3つのモードの予測には先見の明を感じる。
  • 4 この工学的レンズに加えて聴覚的「レンズ」もある。これは三次元環境の特定の場所に、正確に高品位の音を流す。メガネに組み込んだり、宝石として身につけたり、耳管に移植したりすることができる。
    (評価) 5
    誤り。
  • 5 キーボードはまだ存在するが、ほとんどお目にかからない。
    (評価) 5
    キーボードはまだ存在し、毎日お目にかかる。
  • 6 コンピュータとの対話は、おもに手、指、顔の表情によるジェスチャーや、自然言語を使った双方向の会話をとおして行なわれる。つまり、われわれが言葉や仕草で人間のアシスタントとコミュニケーションを取るのと同じ方法で、コンピュータとコミュニケーションを取る。
    (評価) 5
    コンピュータとの対話は、主にキーボードやタッチパネルを使って行われる。
  • 7 コンピュータ・アシスタントの「人格」がかなり注目されている。ユーザーは、自分自身を含めた実在の人物をモデルにしたり、または有名人、友人、同僚などの特徴を自由に組み合わせてモデルにしたりして、コンピュータ・アシスタントに人格をもたせることができる。
    (評価) 5
    確かに音声アシスタントは存在するが、コンピュータ・アシスタントの「人格」は注目されていない。
  • 8 人々は特別な「パーソナル・コンピュータ」をたった1台もっているわけではない。とは言え、コンピュータはひじょうにパーソナルである。
    (評価) 1
    正しい。
  • 9 コンピュータと超広帯域幅の通信装置はいたるところに埋め込まれている。
    (評価) 1
    正しい。
  • 10 ケーブル類はほとんどなくなった。
    (評価) 5
    誤り。電力供給、無線通信の遅延、セキュリティ、無線通信モジュールと充電池の価格などを考慮すると、有線接続のデバイスは今後も使われるだろう。
  • 11 4000ドル (1999年のドル価) のコンピュータの計算能力は、人間の脳 (毎秒2000万x10億回の計算) とほぼ等しい。
    (評価) 3
    判定不能のため評価保留とする。
  • 12 すべての人間の脳の全計算能力と、コンピュータを足し合わせると、そのうちの10パーセント以上を非人間の計算能力が占めることになる。
    (評価) 3
    同上。
  • 13 回転型記憶装置をはじめとする電気機械的なコンピュータ装置は、いまや完全に電子的な装置と置き換わっている。
    (評価) 4
    新規のスマートフォンやサーバに限れば、正しい。しかし、HDDや磁気テープも広く使われている。
  • 14 三次元のナノチューブ格子が、コンピュータ回路の一般的な形である。
    (評価) 5
    誤り。
  • 16 スキャニングを基本にした脳の逆工学が目覚しい進歩を遂げている。脳は数多くの専門化された領域からなっており、それぞれが独自の構造をしたニューロン間結合をもっていることがよく理解されている。
    (評価) 3
    判定不能。後半部分は20世紀から既に知られていた事実だと思われる。
  • 18 どの領域のニューロン間結合も遺伝情報によって規定されてはいないこと、また、遺伝情報がセットしているのは急速な進化のプロセスであって、その中でニューロン間結合が決まり生存競争が繰り広げられることが認識されている。コンピュータにおけるニューラルネット結合の標準的なプロセスも、同じような遺伝的・進化的アルゴリズムを使っている。
    (評価) 5
    同上。
  • 19 量子ベースの回折装置を使用した、コンピュータ制御の新しい光イメージング技術によって、ほとんどのレンズが、どんな角度の光も検出する小さな装置に取って代わる。こうした針の頭ほどのカメラが、いたるところにある。
    (評価) 5
    誤り。量子ベースの光学機器は一般的ではない。
  • 20 ナノ・エンジニアリングによる自律的マシーンはみずからの動きを制御することができ、かなりの計算エンジンを有する。こうしたマイクロ・マシーンは、とくに製造業やプロセス制御において商業的に応用されはじめたが、まだ主流にはなっていない。
    (評価) 5
    誤り。みずからの動きを制御でき、計算エンジンを有する自律的なナノマシンは存在しない。分子ナノテクノロジーの構想にはさまざまな問題があり、想像された通りには進まないだろう。
  • 21 ハンドヘルド・ディスプレイはひじょうに薄く、高品位な画像、そして重さはわずか数十グラムだ。
    (評価) 1
    小型のスマートフォンには100グラムを切るものもある。
  • 22 人々は文書をこのハンドヘルド・ディスプレイで読むか、さらに一般的には、いまやどこにでもあるダイレクト・アイ・ディスプレイを使って、仮想現実に文章を投影して読む。
    (評価) 5
    小型のディスプレイより「ダイレクト・アイ・ディスプレイ」が一般的であるとは言いがたい。
  • 23 紙の本や文書はほとんど利用されない。20世紀の重要な紙文書はほとんどがスキャンされ、ワイヤレス・ネットワークを通じて入手できる。
    (評価) 4
    紙文書は広く利用されている。ただし、古い紙文書のオンライン提供は進んでいる。
  • 24 学習はほとんど、インテリジェント・ソフトウェアによる模擬教師を使って行なわれている。人間の教師が教える場合も、教師は生徒の近くにいない場合が多い。
    (評価) 5
    ほとんどの場合、人間の教師が教えている。
  • 25 教師は学習や知識の源というよりも、助言者やカウンセラーの役割を担っている。
    (評価) 4
    教師が果たす「助言者やカウンセラー」としての役割は拡大するだろうが、旧来の役割も重要である。
  • 26 生徒たちは、アイデアを交換したり交友を深めるために集まるが、じつはこの集りでさえ、物理的、地理的に離れている場合がしばしばある。
    (評価) 5
    携帯電話やSNSを通した交遊もあるが、対面でのコミュニケーションもいまだ広く行われている。
  • 27 すべての学生がコンピュータを使っている。コンピュータはどこにでもあるので、自分のコンピュータをもっていなくてもまず問題はない。
    (評価) 2
    多くの大学が学生向けにコンピュータ室を提供しており、すべての学生がコンピュータを使っていると考えられる。ただし、一番身近なスマートフォンを持っていないと問題になることが多いだろう。
  • 28 労働者のほとんどは、新しい技能と知識の習得のためにかなりの時間を割いている。
    (評価) 1
    幸か不幸か、これは正しい。
  • 29 視覚障害者は、メガネ型のリーディング・ナビゲーション・システムを使用している。このシステムには、デジタル制御された新しい高分解光センサーが組み込まれている。これを使うと、現実世界のテキストを読むことができる。
    (評価) 5
    誤り。
  • 30 ほとんどの文書が電子的になり、印字文朗読はそれほど必要とされていない。このシステムのナビゲーション機能は10年ほど前に登場したが、完全に実用化されている。
    (評価) 5
    誤り。
  • 31 こういった自動リーディング・ナビゲーション・アシスタントは、音声と触覚インジケーターを通じて視覚障害者に文章内容に伝える。このシステムは視覚世界を高画質で映し出すので、視覚障害者以外の人にも広く利用されている。
    (評価) 5
    誤り。
  • 32 網膜や視覚神経の移植が行なわれるようになったが、まだいくつか制限があり、少数の視覚障害者にしか利用されていない。
    (評価) 1
    正しい。再生医療を元にした網膜や視神経の移植の臨床実験がごく初期の研究段階として行われている。
  • 33 聾唖者は、聴覚障害者用レンズ・ディスプレイを通して話の内容を読む。
    (評価) 5
    #2と同様。
  • 34 また、音楽のような別の聴覚体験を視覚的・触覚的に解釈するシステムもある。ただし、このようなシステムが健聴者に匹敵するほどの聴覚体験をどの程度提供できるかどうかは、さまざまな議論がある。
    (評価) 3
    判定不能
  • 35 聴力を向上させるための蝸牛殻やその他の移植がひじょうに効果的で、広く行なわれている。
    (評価) 5
    少なくとも、広くは行われていない。
  • 36 両下肢や四肢を麻痺している人々が、コンピュータ制御の神経刺激装置や外骨格ロボット装置によって歩いたり階段をのぼったりしている。
    (評価) 5
    この種の技術は未だ研究段階にある。
  • 37 物理的距離に関係なく、だれとでもあらゆることができる。これを可能にする技術は使いやすく、どこにでもある。
    (評価) -
    具体性を欠くため、評価の対象外とする。
  • 38 「電話」にはダイレクト・アイ・ディスプレイと聴覚レンズにより投影される高画質の三次元イメージがついている。
    (評価) 4
    どの程度の普及率であるかあいまいである。先進的なスマートフォンには、ごく一部にホログラフィックディスプレイが搭載されている。
  • 39 三次元ホログラフィ・ディスプレイも登場した。
    (評価) 1
    正しい。「登場」という意味では、この種の技術は存在している。
  • 40 両者とも、相手が実際にそばにいるように感じることができる。解像度は人間の視覚と同等かそれ以上になる。
    (評価) 5
    誤り。
  • 41 相手が実際にそばにいるのかそれとも電子通信によって投影されているのか区別がつかない。「会う」という行為は、ほとんどの場合、実際に近くにいる必要はない。
    (評価) 5
    誤り。
  • 42 日常的に利用できる通信技術に質の高い会話翻訳があり、ほとんどの主要言語の組み合わせが可能だ。
    (評価) 2
    Skypeなどに会話翻訳の機能が搭載されている。ただし、決して質が高いとは言いがたい。
  • 43 本、雑誌、新聞、ウェブの文書などを読む、テレビや映画のような三次元動画を観る、三次元テレビ電話をかける、一人または地理的に離れているだれかと一緒に仮想環境に入る、あるいは、これらを組み合わせる ─ こうしたことは、すでに日常となっているコミュニケーション・ウェブをとおして行なわれる。ただし、何か特別な機器や装置は必要ない。身に着けているもの、移植されているもの、それだけで十分だ。
    (評価) 5
    こうしたことは、未だ特別な機器や装置を必要とする。
  • 44 体全体を包み込む触覚環境が広く利用されており、できもよい。その感度は人間の触覚に並ぶか、それを上回る。この触覚環境は、圧力、温度、手ざわり、湿気など、あらゆる種類の触覚刺激をシミュレートする。
    (評価) 5
    広くは利用されていない。
  • 45 視覚的・聴覚な仮想環境においては、ダイレクト・アイ・レンズや聴覚レンズなど、身に着けたり体内に組み込まれた装置のみが必要となる。これに対して完全な触覚環境を体験するには、仮想現実ブースに入らなければならない。
    (評価) 5
    同上。
  • 46 これらの技術は、健康診断や、本物の人間のパートナーや仮想パートナーとの性行為などによく使われている。性行為については、快感やさらに安全性が高まるという理由で、人間のパートナーがたとえそばにいても好まれる。
    (評価) 5
    2019年にも私は人間のパートナーとの性行為を好むだろう。
  • 47 急速な経済発展と繁栄がつづいている。
    (評価) 5
    経済成長は緩慢であり繁栄は衰退しつつあり、大きな問題となっている。
  • 48 業務のほとんどに模擬人間がかかわっている。この模擬人間の特徴は、リアルなイメージ・キャラクタ、そして高度な自然言語処理を用いた双方向コミュニケーションである。
    (評価) 5
    確かに、近年ではコンピュータが業務に大きくかかわっている。しかし、イメージ・キャラクタと高度な自然言語処理を特徴とする「模擬人間」とは呼びがたい。
  • 49 業務に人間がかかわっていないことも多い。担当者は業務を自動アシスタントに代行させて、別の自動アシスタントとやりとりさせている。これらのアシスタントは自然言語を省略し、業務と関連する知識構造そのものを直接やり取りしている。
    (評価) 5
    同上。
  • 50 掃除などの雑用をこなす家庭用ロボットは、いまや広く普及し、頼りにされている。
    (評価) 5
    広く普及していない。
  • 51 自動運転システムは高い信頼性を得ており、そのシステムはほとんどすべての道路に設置されている。
    (評価) 5
    誤り。2009年時点で自動運転に関する予測が外れていたため、この予測も誤りである。
  • 52 一般道路でなら人間が運転することも許可されてはいるものの (高速道路では許可されていない)、自動運転システムはつねに関与しており、事故回避が必要なときは、自動運転システムが介入するようになっている。
    (評価) 5
    誤り。
  • 53 マイクロフラップ (小型の下げ翼) を利用した効率的な自家用飛行機が実証されており、おおむねコンピュータで制御されている。
    (評価) 3
    判定不能。個人向け小型飛行機は既に前世紀から「実証」されており、飛行機のコンピュータ制御も行なわれている。ただし、離着陸と巡航の完全な自動化、広範なインフラ投資、そして法律や制度の改正が実現しない限り、個人用自家用飛行機は広く普及しないだろう。
  • 54 交通事故はまれにしか起こらない。
    (評価) 5
    誤り。そうあることを願うものの、交通事故はありふれている。
  • 55 人々は「自動パーソナリティ」の友人、教師、管理人、恋人とかかわるようになっている。
    (評価) 5
    ごく限られたゲームのようなもの以外、「自動パーソナリティ」は存在しない。
  • 56 この自動パーソナリティは、いくつかの点で人間よりも優れている。たとえば、ひじょうに信頼性の高い記憶力をもっており、希望すれば、予測したりプログラムしたりすることも可能だ。機微という点では、人間ほどではないと見られているが、見解はさまざまだ。
    (評価) 5
    同上。
  • 57 機械知能の影響に対しては、人々に何かしらの不安のようなものがある。
    (評価) 1
    正しい。
  • 58 人間と機械知能には依然として異なる部分があるが、人間の知能の方が優れていると明言するのは難しくなっている。
    (評価) 5
    身体的機能、常識的な推論、自然言語処理などにおいて、人間は未だ人間を超える機械を作ることは難しい。
  • 59 コンピュータ知能は文化のメカニズムに完全に組み込まれている。表面上は人間の指示に従うよう設計されており、人間の業務や意思決定においては、最初は完全に知能機械に依存していたとしても、法律により人間が責任をもつよう決められている。しかし現実には、機械知能の多大な関与と助言なしに意思決定がなされることはほとんどない。
    (評価) 5
    意味不明。
  • 60 公共の場もプライベート空間も、暴力事件がおこらないよう機械知能によって監視されている。
    (評価) 2
    やや正しい。監視カメラは多く、顔認識技術をもとにした個人の識別技術が使われている。ただし、これがカーツワイルが1999年に想定していた「知能機械」であるかは疑問がある。
  • 61 人々は解読不能な暗号技術を使って自身のプライバシーを守ろうとしているが、各個人の実際の行動は、どこかにあるデータベースに保存されており、プライバシーの問題は依然として大きな政治的・社会的問題となっている。
    (評価) 1
    正しい。
  • 62 下層階級の存在も、なお大きな問題だ。経済を大きくゆがめることなく、基本的に必要なもの (とりわけ、安全な住まいと食料) を提供するだけの経済的繁栄はあるものの、責務と出世という古くからある論争は、あいかわらず存在している。
    (評価) 5
    経済的繁栄と多数の人々の物質的な実質的生活水準は低下し続けており、この傾向は更に続くだろう。
  • 63 この問題を複雑にしているのが、大半の仕事が従業員の学習と技能習得にかかわっているという、徐々に表面化しつつある問題だ。つまり、「生産的に」従事している従業員とそうでない人との区別が、必ずしも明確でないということである。
    (評価) 3
    判定不能
  • 64 すべての分野に仮想アーティストが登場し、人々もそれを真剣に受け入れている。これらサイバネティック・ビジュアル・アーティスト、サイバネティック・ミュージシャン、サイバネティック作家は、たいてい、各知識ベースやテクニックに貢献した人間や組織と密接に結びついている。
    (評価) 5
    「サイバネティック・アーティスト」が何を意味するのか、私には意味が分からない。
  • 65 しかし、こうした創造的マシーンがつくる作品への関心は、マシーンが創造的であるという物珍しさの域をすでに超えている。
    (評価) 5
    同上。
  • 66 人間のアーティストによる美術や音楽、文学作品は、ほとんどが人間と機械知能との共同でつくられている。
    (評価) 5
    同上。
  • 67 一番需要の多いアートとエンタテイメント関連の製品は依然として仮想体験ソフトであり、それらは現実の体験をシミュレーションするものから、この世にはほとんど存在しない、あるいはまったく存在しない抽象的環境をシミュレートするものまで、さまざまある。
    (評価) 5
    仮想体験ソフトの市場は未だ立ち上がったばかりである。2019年にも、ゲーム市場全体の10分の1程度を占めるのみだろうと予測されており、「一番需要の多い」とは言えないだろう。
  • 68 国家の安全に対する第一の脅威は、解読不可能な暗号技術を使用して人間と機械知能を合体させるいくつかの小集団からくる。
    (評価) 3
    判定不能。この記述が何を意味しているのか、私には読み取れない。
  • 69 そうした脅威には、
    1. ウイルス・ソフトを使いながら公的な情報チャネルの破壊
    2. 生物工学的につくりだされた病原体
    などがある。

    (評価) 1
    正しい。サイバー攻撃生物兵器に対する懸念は高まっており、脅威の種類については先見の明を感じる。
  • 70 ほとんどの飛行兵器はひじょうに小型だが(昆虫ほどの大きさのものもある)、さらにミクロの飛行兵器も研究されている。
    (評価) 5
    ほとんどの飛行兵器は人が乗り込むものである。「昆虫」に史上最大の昆虫メガネウラを含めなければ誤りだろう。
  • 71 ヒトゲノムに暗号化されている生命のプロセスの多くは10年以上前に解読されたが、現在おもにそれらは、老化現象の、あるいはガンや心臓病のような変性症状の根底にある、情報処理メカニズムとともに理解されている。
    (評価) 4
    やや誤り。ヒトゲノム解読・ゲノム編集の高速の進歩と比較すると、生理学・病理学、薬学、疫学の進歩は緩慢である。
  • 72 最初の産業革命(1780年~1900年)と二番目の第一期(20世紀)の結果として、人間の寿命は40歳弱からほぼ2倍に伸びたが、現在ふたたび大きく伸び、100歳を超えている。
    (評価) 5
    誤り。既に取り上げた通りである。
  • 73 生物工学技術の広範な普及による危険性が、次第に認識されつつある。大学院生と同程度の知識と能力さえあれば、潜在的に大きな破壊力をもつ病原体をだれでもつくることができる。そうした危険性は、生物工学による抗ウィルス治療の恩恵を考えれば、ある程度相殺されるとする考えが不安をまねいている。
    (評価) 1
    正しい。ゲノム編集により潜在的に危険なウィルスや病原体を作成しうる。
  • 74 急性・慢性の両症状を診断してくれる、コンピュータ処理によるヘルス・モニターが広く利用されている。このモニターは、腕時計、宝石、衣服などに組み込まれており、診断だけでなく、治療や処置のさまざまなアドバイスもする。
    (評価) 2
    やや正しい。Apple Watch等のウェアラブル端末に簡単なヘルス・モニターが組み込まれており、バイタルを読み取り記録することができる。ただし、取得可能な情報は未だ限られており、治療や処置に関するアドバイスはできない。
  • 75 コンピュータがチューリングテストに合格したという報告が相次いでいるが、有識者がつくった基準 (人間による判定の緻密さ、インタビュー時間の長さ、等々に関する基準) を満たすまでにはいたっていない。
    (評価) 2
    やや正しい。カーツワイル自身が取り上げている通り、完全に無条件のチューリングテスト人工知能は合格していない。ただし、「報告が相次いで」はいない。
  • 77 コンピュータ知能の主観的経験が真剣に論じられているが、機械知能の権利については大きな議論になっていない。
    (評価) 5
    誤り。「ディープラーニングが意識を持つ」とは誰も信じていないだろう。機械の意識や権利はスペキュレーティブな思考実験以外で論じられることはない。
  • 78 機械知能は依然として人間と機械との共同の産物であるが、それをつくり出した人間への従属関係を維持するようにプログラムされている。
    (評価) 5
    誤り。(どうやらカーツワイルは、知的なふるまいに対して自動的に主観的な意識や自由意志が付随すると想定していたように見える。)