シンギュラリティ教徒への論駁の書

“Anyone who believes that exponential growth can go on forever in a finite world is either a madman or an economist.” - Kenneth Boulding

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2009年 (結果)

こちらは、フューチャリストレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、10年後 (2009年) の将来予測の検証です。

本文は、以下の記事をご覧ください。


概要

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注意事項

  • 予測文の区切りは、条件を合わせて比較するため、以前取り上げたスチュアート・アームストロング氏の区切りに従いました。
  • 評価は、1 (正しい)、2 (やや正しい)、3 (判定不能)、4 (やや誤り)、5 (誤り) の5段階の主観評価です。
  • 可能な限り、2009年時点の技術レベルおよび社会情勢に基づいて評価するように試みましたが、現在2018年時点における技術開発、社会情勢の変化も含めて評価しています。

本文

コンピュータ

  • 1 時は2009年。人々はおもにポータブル・コンピュータを使っている。それは10年前のノート型よりはるかに軽くて薄い。
    (評価) 1
    正しい。
  • 2 コンピュータは、その大きさ形とも、さまざまな種類があり、洋服や、腕時計、指輪、イヤリングといった装飾品に普通に組み込まれている。
    (評価) 4
    日用品や装飾品への埋め込みは普通ではない。
  • 3 高品位なビジュアル・インターフェイスを備えたコンピュータは、指輪、ブローチ、クレジットカードから薄い本のものまで、いろいろある。
    (評価) 5
    同上。ディスプレイの埋め込みは一般的ではない。
  • 4 ほとんどの人が少なくとも10個のコンピュータを身につけており、それらは「ボディーLAN」(ローカル・エリア・ネットワーク) でネットワーク化されている。
    (評価) 5
    スマートフォンには10個以上の機能が組み込まれているものの、文字通りにこの予測を読めば誤りである。
  • 5 これらのコンピュータは携帯電話やポケットベルに似た通信機能を持ち、さらに身体機能をチェックしたり、金融関係の取引やセキュリティ・エリアへ立ち入る際に必要となる自動人物識別を行なったり、ナビゲータの役割を果たしたりと、さまざまなことをこなす。
    (評価) 1
    多くがスマートフォンで可能な機能である。
  • 6 たいていの場合、こういった真に「パーソナルな」コンピュータには、動く部品がついていない。
    (評価) 1
    正しい。
  • 7 メモリは完全に電子的であり、ほとんどのポータブル・コンピュータにはキーボードがない。
    (評価) 1
    多くのスマートフォンやノートPCはフラッシュメモリを用いている。iPhoneの発売は2007年である。
  • 8 回転型記憶装置 (つまり、ハード・ドライブ、CD-ROM、DVDなどのような回転盤を使用するメモリ) は、いまや廃れつつある。ただし回転型磁気記憶装置は、大量の情報を保持するサーバーではまだ使用されている。
    (評価) 1
    正しい。
  • 9 ユーザーのほとんどが自宅やオフィスにサーバーをもち、ソフトウェア、データベース、文書、音楽、映画、仮想現実環境 (ただしこれはまだ初期の段階のものだが) のような「デジタル・オブジェクト」を大量に保存している。
    (評価) 1
    TVレコーダーやPCがメディアサーバの機能を持ち、オフィスでもファイルサーバが一般的に使われている。
  • 10 個人のデジタル・オブジェクトを保管してくれるサービスセンターもあるが、ほとんどの人がプライベート情報は自分自身で管理するのを好む。
    (評価) 4
    2000年代のクラウドコンピューティングの潮流を予測できていなかったと感じられる(Gmailは2004年、AWSは2006年にサービス開始) カーツワイルは、各種アンケートを用いてクラウドサービスのセキュリティに懸念があることを示しているものの、懸念を超える利便性があり普及したことを予測できていない。
  • 11 ケーブル類は姿を消しつつある。
    (評価) 2
    現在進行形にあいまいさがあるが、1999年と比較すればケーブルは減ったと言える。
  • 12 ポインティング・デバイス、マイク、ディスプレイ、プリンタ、そして時にはキーボードといったコンポーネント同士の通信には、短距離のワイヤレス技術が使用されている。
    (評価) 1
    正しい。
  • 13 コンピュータにはたいてい、ワールドワイド・ネットワークに接続するためのワイヤレス技術が内蔵されている。一方、このワールドワイド・ネットワークは、即時に利用できて信頼性の高い超広帯域幅 (つまり、回線容量がひじょうに大きい) の情報伝達を提供している。
    (評価) 2
    正しい。
  • 14 本、音楽アルバム、映画、ソフトウェアなどのデジタル・オブジェクトは、データファイルとしてワイヤレス・ネットワークを通して即座に配信される。それらがデジタル・オブジェクトから連想されるような「実物」はないのが一般的だ。
    (評価) 1
    正しい。
  • 15 文章の大半は連続音声認識 (CSR) 書き取りソフトを使ってつくられているが、依然としてキーボードも使われている。
    (評価) 5
    近年になって音声入力は使われつつあるものの、「大半」ではない。特に日本語の場合はかな漢字変換の問題があること、公共の場では音声よりキーボード入力が「パーソナル」であることを考えると、音声入力の用途は限定されるだろう。
  • 16 CSRはひじょうに正確で、数年前まで利用されていた入力代行屋のはるか上をいく。
    (評価) 4
    2008年にはYoutube音声認識による字幕生成機能が導入されているが、人間よりはるかに優れているとは言いがたい。
  • 18 LUIは、単純なビジネス業務や情報の問い合わせといった日常的なことにきわめて反応がよく正確だ。
    (評価) 2
    検索や定型的な問い合わせ、商品の購入などに使用することができるがそれほど正確ではない。
  • 19 しかし、どちらかと言えば特定の仕事に焦点が当てられている。
    (評価) 2
    #18と同様。
  • 20 またLUIは、しばしばイメージ・キャラクタとも結びついている。
    (評価) 5
    音声アシスタントは存在するが、無個性で、人格を感じさせない作りとなっているものが多い。
  • 21 イメージ・キャラクタと対話しながら買い物をしたり何かの予約をしたりする行為は、そのキャラクタがシミュレーションであるという点を除けば、まるでテレビ会議で人間と話をしているようだ。
    (評価) 5
    2018年現在でも、音声アシスタントは、「対話」したり長期的なコンテキストを保持することはできず人間には及ばない。
  • 22 コンピュータ・ディスプレイは高品位、ハイ・コントラストで視野が広く、ちらつきもなく、紙がもつすべての質を備えている。
    (評価) 2
    紙が持つ性質のうちで、「閲覧時に環境光以外の外部エネルギーを必要としない」という性質は、ディスプレイにはない。しかし、それ以外の点では正しい。
  • 23 であるので、本、雑誌、新聞などは、文庫本程度の大きさのディスプレイ上で読まれるのが一般的だ。
    (評価) 1
    正しい。
  • 24 メガネに組み込まれたコンピュータ・ディスプレイも使用されている。
    (評価) 5
    この種類のデバイスのプロトタイプは約20年前から存在するが、未だ簡単に入手・利用可能であるとは言いがたい。
  • 25 この特殊なメガネは、普通に景色も見られるが、さらに仮想イメージをつくり出す。
    (評価) 5
    #24と同様
  • 26 この仮想イメージは、ユーザーの網膜に直接イメージを投影する小さなレーザーによって生み出されている。
    (評価) 5
    #24と同様
  • 27 コンピュータにはたいてい動画カメラが組み込まれており、顔からそのコンピュータの所有者を確実に識別する。
    (評価) 1
    正しい。近年ではスマートフォンにも顔認証機能が組み込まれている。
  • 28 回路に関しては、一般に立方体チップが使われており、古い単層型チップからの移行が進行しつつある。
    (評価) 2
    積層型の回路、三次元リソグラフィが実用化されている。
  • 29 従来型のスピーカーは、ひじょうに小さなチップをベースにしたデバイスにその座をゆずりつつある。
    (評価) 5
    誤り。旧来のスピーカーは広く使われている。
  • 30 このデバイスは、三次元空間のどこにでも高品位なサウンドを生み出してくれる。
    (評価) 5
    同上。
  • 31 これは、ひじょうに高い周波数の音の相互作用により生み出されるスペクトルから可聴音をつくり出す技術で、かなり小さいスピーカーでも重厚感ある三次元サウンドをつくることができる。
    (評価) 5
    同上。
  • 32 1999年のドル価で1000ドル程度のコンピュータは、毎秒約1兆回の計算をすることができる。
    (評価) 1
    正しい。カーツワイルが挙げているとおり、2009年時点で1000ドル以下のGPUはテラフロップスの計算能力を持つ。
  • 33 またスーバー・コンピュータは、少なくとも人間の脳のハードウェア性能--毎秒2000万x10億回の計算--に並んでいる。
    (評価) 3
    計算力に限ればおおよそ正しい。しかし、「人間の脳のハードウェア性能」という言葉の意味は、私にはよく分からない。
  • 34 またインターネット上の未使用のコンピュータが利用されることにより、人間の脳のハードウェア性能に匹敵する仮想の並列型スーパー・コンピュータが出現している。
    (評価) 3
    同上。近年、インターネット上の余剰計算力の使途が、「知能」の実現にではなく仮想通貨のマイニングに使用されていることは皮肉である。
  • 36 人間の脳に対する逆工学の研究がはじまっている。この研究では、死亡して間もない人間の脳を破壊的にスキャンするだけでなく、磁気共鳴映像装置 (MRI) によって、生きた人間の脳を非侵襲的にスキャンすることも行なわれている。
    (評価) 1
    正しい。
  • 37 ナノ・エンジニアによる自立的マシーン (つまり、原子単位、分子単位でつくられたマシーン) が実証されている。これらのマシーンは、それ自体がコンピュータでコントロールされている。
    (評価) 3
    分子サイズの機械的構造は実証されているものの、コンピュータ制御されたナノマシンではなく、従来の化学的な方法により製造されているものである。
  • 38 ただし、ナノ・エンジニアリングはまだ実用的な技術とは見なされていない。
    (評価) 1
    正しい。

教育

  • 39 20世紀、学校にあるコンピュータの大半は脇役で、コンピュータによるもっとも効果的な学習は自宅で行なわれていた。しかし2009年のいま、学校はまだコンピュータの最前線にはいないものの、知識の道具としてのコンピュータの重要性が広く認知されている。
    (評価) 1
    正しい。
  • 40 コンピュータは、生活全般においてそうであるように、教育においてもあらゆる側面で中心的な役割を果たしている。
    (評価) 1
    正しい。教師、生徒共に何らかの形でコンピュータを使っている。
  • 41 インストールされた文書は依然として多いものの、読む行為の大半はディスプレイ上で行なわれている。
    (評価) 1
    正しい。紙の文書は残り続けているものの、読む行為はPCやスマートフォンが使われている。
  • 42 しかし、おもに20世紀の書物やその他の文書は急速にスキャンされてコンピュータに保存されており、紙文書の時代は終わりつつある。
    (評価) 4
    多くの書物や文書がオンライン上で利用可能なものの、紙文書の時代は終わる気配を見せない。本書のこの記述を、私が紙の書籍から手入力する羽目になったのは皮肉である。
  • 43 2009年ごろの文書には、たいてい動画や音が取り込まれているだろう。
    (評価) 2
    「たいてい」ではないものの、技術的には文書に動画や音を取り込むことは可能である。
  • 44 あらゆる年齢の学生が、自分のコンピュータをもっている。重さ500グラム以下の薄いタブレット状のもので、ひじょうに高解像度のディスプレイがついており、読書にはうってつけである。
    (評価) 4
    タブレットは広く普及しているものの、「あらゆる年齢」に当てはまるとは言いがたい。
  • 45 子供たちはおもに音声を使ったり、また鉛筆に似たデバイスで画面を指したりしながら、コンピュータと対話をする。
    (評価) 2
    おおむねタッチパネルを使った操作が使われている。
  • 46 キーボードはまだ存在しているが、テキスト文のほとんどは音声によりつくり出されている。
    (評価) 5
    #15と同様
  • 47 学習教材には、ワイヤレス通信でアクセスしている。
    (評価) 1
    正しい。
  • 48 知的な教育ソフトが学習の一般的な手段として登場している。
    (評価) 2
    必ずしも一般的ではないが、学習手段としての知的な教育ソフトは多い。
  • 49 最近の研究によると、読みや算数といった基礎的技能に対話型学習ソフトを使うと、とくに生徒対教師の比率が一対一以上のときは、教師に教わる場合と同じぐらい早く学習できるという。
    (評価) 3
    判定不能
  • 50 これらの研究はいろいろ批判を浴びているが、もう何年もの間、ほとんどの学生と父兄がこうした考えを受け入れている。
    (評価) 3
    同上。
  • 51 一人の教師が何人もの生徒を教えるという伝統的な方法は、いまだに広く行なわれているが、学校は次第に教育ソフトに依存するようになっており、教師は生徒のやる気 (モチベーション)、精神的安定、社会性といった問題にまず目を向けるようになっている。
    (評価) 4
    学校はそれほど教育ソフトに依存してはおらず、教師の役割はそれほど変化していない。
  • 52 [対応する訳文なし] (参考訳:多くの子供たちは、小学校入学前に自分のパーソナル・コンピュータを使って自力で読むこと学ぶ)
    (評価) 4
    コンピュータよりも、絵本やテレビなどを使って学ぶことが多い。
  • 53 幼稚園児や小学生は、読む力が向上するまで、各自のレベルに合ったテキスト朗読ソフトを使って読む練習をしている。
    (評価) 5
    テキスト朗読ソフトは存在するものの、子供の読解の練習においてはそれほど広く使われていない。
  • 54 このテキスト朗読システムは文書全体を表示しながら読み上げるもので、その間、読んでいる箇所をマーカーで強調するようになっている。
    (評価) 2
    この種のテキスト朗読システムは存在する。
  • 55 合成音声は、ほぼ完全な人間の声に聞こえる。
    (評価) 2
    2010年代後半であれば完全に正しい。
  • 56 21世紀に入って数年間、教育関係者の中には、子供たちが朗読ソフトに頼りすぎるようになるのではないかと危惧する向きもあったが、いまや子供も父兄もこうしたシステムを喜んで受け入れるようになっている。
    (評価) 5
    #53と同様。
  • 57 さらにさまざまな研究により、映像と音声を合わせた文章を提示することで、子供たちの読む力が向上することも明らかになっている。
    (評価) 3
    判定不能
  • 58 遠隔地学習 (たとえば、地理的に離れている学生たちが同じ講義やセミナーを受ける) も普通に行なわれている。
    (評価) 1
    予備校などでは一般的な形態であり、動画共有サービスを使った講義動画共有も行われている。
  • 59 一方、学習は多くの仕事において重要な一部になりつつある。
    (評価) 1
    幸か不幸か、ホワイトカラー、ブルーカラーどちらにおいてもこれは正しい。
  • 60 雇用の際に求められる技能レベルがどんどん上がっているなか、新しい技能の訓練や向上は、ときおり補足的に行なわれるものではなく、ほとんどの仕事において、つねに行なわれるべき義務になりつつある。
    (評価) 1
    #59と同様。

障害者

  • 61 2009年の知的なテクノロジーにより、障害をもった人たちが急速にハンディキャップを克服しつつある。
    (評価) 5
    #74と同様。
  • 62 読む力に障害のある学生は、テキスト朗読システムを使うことにより障害を乗り越えつつある。
    (評価) 3
    判定不能。機能的非識字は近年非常に大きな問題となっているものの、文字を音声化することだけで解決できるかは疑問がある。
  • 63 視覚障害者のためのテキスト朗読機は、いまやひじょうに小型で安価なパーム・サイズのデバイスになっており、(まだ紙の形で残っている) 本などの印刷文書、さらに標識や広告印刷物などの文字を読むことができる。
    (評価) 3
    文字認識ソフトウェアは存在しスマートフォンでも使用できるものの、視覚障害者向けに使いやすいインターフェイスが存在するか不明。
  • 64 これらの朗読システムは、広く普及しているワールドワイド・ネットワークから即座に入手できる無数の電子文書を読むことにも長けている。
    (評価) 1
    視覚障害向けのスクリーンリーダーは広く使われている。
  • 65 何十年もの試みを経て、ようやく便利なナビゲーション・システムが登場した。これは、人工衛星による位置測位システム (GPS) 技術を利用し、行く手の障害物を避けながら道を探し出し、視覚障害者をアシストするものだ。
    (評価) 3
    スマートフォンの地図アプリは類似の機能を持つ。しかし、#63と同様に視覚障害者向けインターフェイスとして実用水準に達しているかは疑問がある。
  • 66 視覚障害者は朗読ナビゲーション・システムとも対話できるから、何かを読んだり話をしたりする盲導犬を連れているようなものだ。
    (評価) 5
    少なくとも、地図アプリは「盲導犬」のレベルには達していない。
  • 67 聾唖者--あるいは難聴の人--は、たいてい、話した言葉を即座に文字表記してくれる携帯型音声テキスト変換マシーンをもっている。
    (評価) 2
    Siriなどの音声アシスタントがこの用途で使われることがある。
  • 68 このマシーンは、話している内容をリアルタイムでテキスト文字に変換する。聾唖者は文字に変換された会話文を読むか、手話をするイメージ・キャラクタの、いずれかを選択できるようになっている。
    (評価) 2
    #67と同様。
  • 69 いまやこのマシーンにより、聾唖者が抱えるコミュニケーション・ハンディキャップという問題はなくなった。
    (評価) 5
    現在でも聾唖者が抱えるコミュニケーション・ハンディキャップは大きい。
  • 70 さらに、話している内容をリアルタイムに他の言語に翻訳することもできるので、耳が不自由でない人にも利用されている。
    (評価) 5
    #15と同様。
  • 71 コンピュータ制御の歩行支援マシーンが登場している。これらの「歩く機械」により、両足が麻痺している人でも歩いたり、階段を上ることができるようになっている。
    (評価) 2
    研究段階ではあるものの、「歩く機械」は登場している。
  • 72 ただし多くの身体障害者が、長い間動かさなかったことによる関節機能障害をおこしているので、両足が麻痺しているすべての身体障害者が義肢を利用できるわけではない。
    (評価) 2
    #71と同様。
  • 73 しかし歩行支援システムの登場により、機能障害を起こしている関節を取り替えようという動きも、以前よりも活発になってきている。
    (評価) 5
    #71と同様。
  • 74 盲目、聾唖をはじめとする身体的障害は必ずしもハンディキャップにはつながらないという認識が次第に高まりつつある。
    (評価) 5
    そのような世界が訪れてほしいものではあるが、現状ではまだ乗り越えるべき壁は高いと感じる。
  • 75 身体障害者もその障害を語るとき、ちょっと不便なもの、という程度になっている。いまや知的なテクノロジーは、障害者と健常者の壁を取り除くものになっている。
    (評価) 5
    #74と同様。

通信 (コミュニケーション)

  • 76 翻訳電話 (たとえば、こちらが英語で話すと日本人の友人がその内容を日本語で聞けるもの) の技術が、多くの言語で利用されている。
    (評価) 4
    近年ではSkypeなどに音声翻訳機能が搭載されている。
  • 77 たいていの場合、個人のパソコンでもその機能が実現されており、パソコンを電話としても使えるようになっている。
    (評価) 4
    #76と同様。
  • 78 電話は基本的にワイヤレスであり、高品位の動画が使えるようになっている。
    (評価) 1
    正しい。電話は基本的には携帯電話となっている。
  • 79 これにより、地理的に離れている者同士が、さまざまな種類・規模の会議を行なっている。
    (評価) 1
    正しい。TV会議、Skypeメッセンジャーアプリなどを用いた会議が広く行われている。
  • 80 あらゆるメディア--少なくとも本やCDのような「ハードウェア」とその中身の「ソフト」--が、効率よく統合されている。つまり、いまやそれらは広帯域のワイヤレス・ウェブから配信される「デジタル・オブジェクト」(つまりファイル) として存在している。
    (評価) 1
    正しい。電子書籍音楽配信は一般的である。
  • 81 これにより、本、雑誌、新聞、テレビ、ラジオ、映画などのソフトを、個人用の携帯型通信デバイスに簡単にダウンロードできるようになっている。
    (評価) 1
    #80と同様。
  • 82 事実上すべての通信がデジタルに暗号化されており、行政機関は公開鍵を利用している。
    (評価) 2
    多くの通信が暗号化されており、行政機関への手続きも暗号化されたWebを通して行うことができる。
  • 83 さらに個人、そして犯罪組織を含む多くの団体が、事実上解読不可能な暗号コードを使っている。
    (評価) 1
    正しい。
  • 84 離れた場所にある物や人間に触れているような感覚を与える触覚技術が登場しはじめている。
    (評価) 2
    触覚VRは現在でも研究が進められており、未だ簡単な触覚しか伝えられないものの、ゲーム機のコントローラなどには振動を用いた触覚技術が使われている。
  • 85 この「フォース・フィードバック装置」は、ゲームや訓練用シミュレーション・システムで広く利用されている。
    (評価) 2
    #84と同様
  • 86 双方向型 (対話型) ゲームには十分な視覚・聴覚環境が組み込まれているが、触覚環境はまだ対応されていない。
    (評価) 4
    VRゲームの盛り上がりは2010年代後半であり、やや時期尚早だったと言える。
  • 87 1990年代後半のオンライン・チャットルームに代わり、視覚的にはきわめてリアルに人と出会える仮想環境が登場している。
    (評価) 2
    登場はしている。
  • 88 遠方の人間や仮想パートナーと性的体験をするようになっている。
    (評価) 2
    ポルノはインターネット上のコンテンツとして人気があるが、ほぼゲームであり「仮想パートナー」と呼べる水準には達していない。
  • 89 しかし触覚環境がまだ十分ではないので、こうしたバーチャル・セックスはまだ主流ではない。
    (評価) 1
    正しい。
  • 90 仮想パートナーは性のエンタテイメントとして人気はあるが、まだゲームのようなものだ。
    (評価) 2
    #88と同様。
  • 91 電話は通話している相手を高品位の動画でリアルタイムに映し出せるため、テレフォン・セックスのほうがずっと人気がある。
    (評価) 1
    近年、ライブチャットによるポルノ配信が人気を集めていることを考えると、先見の明があると感じられる。

ビジネスと経済

  • 93 もっとも伸びているのは相変わらず株式相場である。
    (評価) 2
    #92と同様。
  • 94 2000年代初期、物価の下落がエコノミストに不安を抱かせたが、彼らはすぐにそれが悪いものではないことに気づいた。何年にも前にコンピュータのハードウェア、ソフトウェア産業に著しい物価下落が生じたが、ハイテク業界は、損失はなかったと指摘したからである。
    (評価) 5
    2000年代から2010年代にかけて、デフレは大きな経済問題となった。
  • 95 アメリカは、その大衆文化の影響力と創造的なビジネス環境により、依然として経済をリードしつづけている。情報市場はおもに世界を相手にする市場であるから、アメリカにとってその移民の歴史は大いに役立ってきた。アメリカが世界中の民族--つまり、よりよい生活のために大きな危険を冒しつつ世界各地から集まってきた人々の子孫--で構成されていることは、知識ベースの新しい経済にとって理想的な遺産である。
    (評価) 1
    正しい。ただし、かの国の近年の移民排斥感情の高まりを考えると皮肉な予測ではある。
  • 96 中国もいまや強力な経済国になっている。
    (評価) 1
    中国の名目GDPが日本を抜き世界2位となったのは、2010年である。
  • 97 ヨーロッパは、ベンチャー精神を促進させるベンチャー・キャピタル、従業員ストック・オプション、税制において、日本や韓国の数年先を行っている。ただし、こうした動きは世界的に広まりつつある。
    (評価) 1
    正しい。
  • 98 少なくとも取引の半分はオンラインで行なわれている。
    (評価) 1
    正しい。
  • 99 連続音声認識自然言語理解、問題解決、イメージ・キャラクタなどを統合した「インテリジェント・アシスタント」が情報を探したり、質問に答えたり、取引を行なったり、といった手助けをしている。
    (評価) 5
    #20と同様。
  • 100 インテリジェント・アシスタントは情報ベースのサービスにおいて主要なインターフェイスになっており、幅広い選択もできるようになっている。
    (評価) 5
    同上
  • 101 最近の世論調査によると、男性ユーザーも女性ユーザーも、インテリジェント・アシスタントには女性を好むという。
    (評価) 1
    近年の音声アシスタントでは、女性の声が好まれているという調査がある。
  • 102 そしてもっとも人気のあるイメージ・キャラクタは、自称ハーヴァード・スクウェアのカフェで働く「マギー」というウェイトレスと、ニューオーリンズ出身のストリッパー「ミッシェル」だそうだ。
    (評価) 5
    #20と同様。
  • 103 キャラクター・デザイナーの需要は高く、ソフトウェア開発において成長分野になっている。
    (評価) 4
    #20と同様。
  • 104 本、音楽アルバム、ビデオ、ゲームなどのソフトを購入する場合、実際に物理的に「物」をやりとりする場合はほとんどない。こうした情報提供を行うための新しいビジネスも登場している。
    (評価) 1
    正しい。
  • 105 これらの情報オブジェクトを買うには、まず仮想ショッピング街を散歩し、興味を引いたものをチェックする。そしてすぐに (そして安全確実に) オンラインで取引をし、つぎに高速ワイヤレス通信によって即座にその情報をダウンロードする。
    (評価) 2
    「仮想ショッピング街を散歩」という言葉が若干引っかかるが、ここで書かれたようなオンライン取引は現在可能である。
  • 106 こういった商品へのアクセス権を入手するための取引方法には、じつにさまざまなものがある。
    (評価) 1
    正しい。
  • 107 本、音楽アルバム、ビデオなどを買い、それによって永久かつ無制限にこれらへのアクセス権を手にすることもできるし、1回または数回、読んだり、見たり、聴いたりするアクセス権を借りることもできる。
    (評価) 1
    #106と同様。
  • 108 アクセスは1人か1グループ (たとえば家族や仲間) に限られる場合もあるし、特定のコンピュータに限られる場合もある。
    (評価) 1
    #106と同様。
  • 109 またコンピュータそのものは任意だが、特定の1人または特定の何人かがアクセスするコンピュータに限られることもある。
    (評価) 1
    #106と同様。
  • 110 仕事のメンバーが、地理的に離れて仕事をする傾向が強くなっている。
    (評価) 1
    正しい。近年では在宅・リモートワークが盛んになっている。
  • 111 異なる場所に住んで仕事をしているにもかかわらず、グループでうまく仕事を進めている。
    (評価) 1
    #110と同様。
  • 112 平均的家庭には、100台以上のコンピュータがあるだろう。そのほとんどは家庭用電化製品や備え付けの通信システムに組み込まれている。
    (評価) 4
    組み込みのマイコン等は増えている。しかし、数え方によるものの、100台以上は無いだろう。
  • 113 家庭用ロボットも登場しているが、まだ十分には受け入れられていない。
    (評価) 1
    Rumbaなど、家庭用ロボットが市販されている。
  • 114 「インテリジェント・ロード」(コンピュータで自動車の動きを制御する道路) が主として長距離移動に使用されている。
    (評価) 5
    誤り。(これはカーツワイル自身が誤りを認めている数少ない例である) 近年では自動運転の開発が進んでいるが、精度向上と普及までにはまだ5年程度要するだろう。
  • 115 自動車のコンピュータガイダンスシステムが、インテリジェント・ロード上にあるコントロールセンサーにロックインすると、あとはゆっくり座っていられる。
    (評価) 5
    誤り。現在の「自動運転」システムでは、人間の運転手がいつでも運転できる状態にいる必要がある。
  • 116 ただし、一般道はほとんど従来のままである。
    (評価) 1
    正しい。
  • 117 ミシシッピー川の西、メーソン-ディクソン線の北にあるとある企業 [これはマイクロソフト社を指している] は、マーケット・キャピタライゼーション (企業の市場価値) が1兆ドルを超えた。
    (評価) 5
    2018年現在、時価総額1兆ドル超の企業は未だ存在しない。今後数年以内に経済危機がなければ、AppleAmazonのどちらかが2020年までに到達するだろう。

政治と社会

  • 118 プライバシーが大きな政治問題になっている。
    (評価) 1
    正しい。
  • 119 事実上間断なく電子通信技術が使われているため、各個人の動き1つひとつが詳細な痕跡となって残りつつある。
    (評価) 1
    正しい。
  • 120 すでに起きている多数の訴訟により、個人データの広範な流出にある程度の歯止めがかけられている。
    (評価) 4
    残念ながら、多数の訴訟はあれど個人データの流出は歯止めがかかっておらず、無償で収集された個人データの商業的な利用も進むだろう。
  • 121 しかし役所は依然として、個人のデータ・ファイルヘのアクセス権をもっているため、結果として解読不可能な暗号技術が一般的になっている。
    (評価) 2
    公的機関による個人データへのアクセスが懸念されている。
  • 122 技術の梯子が上方へ伸びるにつれ、ネオ・ラッダイト運動が盛んになりつつある。
    (評価) 5
    テクノロジーへの懸念はあるものの、「運動」と呼べるほど大きなものではなく、少なくとも盛んではない。
  • 123 過去のラッダイト運動と同じように、その影響は、新しいテクノロジーによって可能になる繁栄により制限を受けている。
    (評価) 5
    同上。
  • 124 ただしネオ・ラッダイト運動は、教育を、雇用と関連するもっとも重要な権利として継続させることにおいて、まちがいなく成功をおさめている。
    (評価) 5
    同上。
  • 125 技術の梯子に取り残された下層階級に対する懸念はいまもある。
    (評価) 1
    正しい。
  • 126 しかし下層階級の規模は変わらないように見える。
    (評価) 5
    下層階級の規模は拡大しているように見える。拡大傾向はさらに続くだろう。
  • 127 政治的に評判は悪いが、公的援助と、全体として高いレベルの豊かさによって、下層階級は政治的に無力化している。
    (評価) 3
    判定不能。2009年であれば正しいと判定できたかもしれないが、Brexitやトランプ旋風を経た現在読むと、皮肉である。

アート

  • 128 高品位のコンピュータ画面と描画ソフトによって、いまや、コンピュータの画面はビジュアル・アートの選択メディアの1つになっている。
    (評価) 1
    正しい。多くの人がイラストを描き、写真を撮影し、それをコンピュータの画面で表示している。
  • 129 たいていのビジュアル・アートが、人間のアーティストと知的なアートソフトとの合作である。
    (評価) 5
    たいていのビジュアル・アートはコンピュータを使っているが、未だに道具としての使い方がメインであり、知的なアートソフトとの「合作」であるとは言えない。
  • 130 仮想絵画--高品位の壁掛け型ディスプレイ--が人気を博している。
    (評価) 2
    壁掛け型のディスプレイは存在し、「仮想絵画」を表示することは可能である。
  • 131 従来の絵画やポスターのようにいつも同じ作品を展示するのではなく、声による命令で展示品を変えたり、アートコレクションを順番に展示することもできる。
    (評価) 2
    同上。技術的には可能である。
  • 132 展示される作品は人間のアーティストによるものもあるし、サイバネティック・アートソフトによってリアルタイムにつくられるオリジナル作品もある。
    (評価) 5
    誤り。
  • 133 人間のミュージシャンはたいてい、サイバネティック・ミュージシャンと一緒に演奏している。
    (評価) 5
    電気的に制御されている楽器も多いが、「サイバネティック・ミュージシャン」という言葉から受ける印象とは異なる。
  • 134 音楽創作はミュージシャンでない人でもできるようになった。
    (評価) 1
    正しい。
  • 135 音楽をつくる場合、従来のように、筋肉の動きを微妙に協調させながらコントローラを使う、といったことは必ずしも必要ではなくなったのだ。サイバネティック音楽創作システムにより、音楽は好きだけれど音楽理論に疎いといった人でも、自動作曲ソフトを使って音楽をつくれるようになっている。
    (評価) 2
    ボーカロイドなど、作曲を支援するソフトウェアにより作曲が可能となっている。ただし、未だ音楽や作曲の理論は必要とされる。
  • 136 人間の脳波と聴いている音楽との間に共鳴を生み出す双方向的な「脳生成音楽」も人気のあるジャンルの1つだ。
    (評価) 5
    少なくとも「人気のあるジャンル」ではない
  • 137 ミュージシャンは古いアコースティック楽器 (ピアノ、ギター、バイオリン、ドラムなど) の演奏スタイルを模倣するエレクトロニック・コントローラを使っているが、手、足、口などの身体部分を動かして音楽をつくる新しい「エアー・コントローラ」にも大きな関心が集まっている。
    (評価) 3
    判定不能
  • 138 このほか、特別に設計されたデバイスと対話するようなコントローラもある。
    (評価) 3
    判定不能
  • 139 作家は音声入力ワープロを利用している。文法チェック機能は、本当に使えるものになっている。また論文から本にいたるまで、文書の配布には紙やインクを必要としない。
    (評価) 4
    #15と同様。
  • 140 文書の質を上げるために、文体チェックや自動編集ソフトが広く利用されている。
    (評価) 2
    スペルチェッカーなど、文書作成において補助的な役割を果たすソフトウェアが存在する。
  • 141 さまざまな言語の文書を翻訳するソフトも広く使われている。
    (評価) 2
    機械翻訳は未だ研究段階ではあるものの、広く使われている。
  • 142 しかし、書き言葉を生み出す中心的プロセスは、ビジュアル・アートや音楽ほど、インテリジェントソフトに影響されてはいない。
    (評価) 1
    正しい。
  • 143 とは言え、サイバネティック作家も登場しつつある。
    (評価) 5
    ある程度の長さを持ち、かつ意味が破綻せず、長期的なコンテキストを保持した文章の自動生成は未だ困難である。
  • 144 音楽、画像、ビデオ映画以外でもっとも人気のあるデジタル・エンタテイメント・オブジェクトは、仮想体験ソフトだ。
    (評価) 5
    VRは未だ発展途上であり「もっとも人気がある」とは言いがたい。
  • 145 こうした双方向仮想環境によって、たとえば仮想の川で水しぶきを浴びながら川下りをしたり、仮想のグランドキャニオンでハングライダーを楽しんだり、さらに好きな映画スターとご親密になったりすることができる。
    (評価) 2
    おおむね正しい。
  • 146 [対応する訳文なし] (参考訳:さらには、現実世界に対応するもののないファンタジー環境も体験できる。)
    (評価) 2
    同上。
  • 147 仮想現実の視覚的、聴覚的体験はなかなかのものだが、触覚的体験の方はまだ十分ではない。
    (評価) 2
    VRの体験は未だ発展途上である。

戦争

  • 148 コンピュータと情報通信におけるセキュリティは、アメリカ国防総省の最大の焦点である。
    (評価) 2
    軍事における情報セキュリティの懸念は高まりつつある。ただし、「最大の」であるとは言いがたい。
  • 149 コンピュータの能力の完全性を維持できる側が戦場を制する、というのが一般的な認識である。
    (評価) 5
    戦場におけるコンピュータの役割は高まっているものの、旧来の歩兵も未だ重要である。
  • 150 人間は戦場から遠く離れた場所に控えており、
    (評価) 4
    #151と同様。
  • 151 戦闘は無人の飛行装置によって支配される。
    (評価) 4
    無人戦闘機やドローンの登場を予測していたことは注目に値する。ただし、領域支配には今なお歩兵が必要である。
  • 152 こうした飛行兵器の多くは小鳥ぐらいの大きさか、それより小さいものである。
    (評価) 5
    大多数の飛行兵器は人が乗り込むものであり、ドローンも「小鳥」よりは大きい。
  • 153 アメリカは依然として世界一の軍事大国である。このことは広く世界に認められているので、ほとんどの国は経済競争に専念している。
    (評価) 1
    正しい。
  • 154 国家間の軍事衝突はごくまれで、衝突はほとんどの場合、国家と小さなテロリスト集団との間で起きている。
    (評価) 2
    911テロ前の予測であることを考えると、低強度紛争、非対称戦争の予測には先見の明を感じる。ただし、国家間の軍事衝突も「ごくまれ」とは言いがたい。
  • 155 国家安全の最大の懸念は生物工学兵器である。
    (評価) 4
    生物工学兵器の脅威も高まりつつあるものの、「最大の」であるとは言いがたい。

健康と医療

  • 156 生物工学的治療によって、ガン、心臓病、その他さまざまな病気による死亡者数が減少している。
    (評価) 3
    近年では病気による死者数は増加しているが、高齢化に伴う影響を除いた死亡率では改善しつつある。ただし、健康に貢献しているものは旧来の医学、薬学であり、「生物工学的治療」ではないと思う。
  • 157 病気の情報処理基盤の理解がいちじるしく進歩しつつある。
    (評価) 2
    さまざまな疾患の原因が解明されつつあるものの、「情報処理基盤」と呼べるかは疑問がある。
  • 158 遠隔医療が広く利用されている。
    (評価) 4
    少なくとも、「広く」は利用されていない。なお、カーツワイルは遠隔医療用のソリューションが存在していることを挙げているが、実際の遠隔医療の利用率を示していない。
  • 159 医師は遠方から視覚的、聴覚的、触覚的な診断を利用して、患者を診察することができるようになっている。
    (評価) 4
    #158と同様。
  • 160 比較的安い装置と、技師が1人いるだけの病院が、それまで医者のいなかった遠隔地に医療を提供している。
    (評価) 5
    #158と同様。
  • 161 コンピュータによるパターン認識を使って画像化データを解釈している。
    (評価) 2
    2009年時点では誤りと言えるかもしれない。近年では、ディープラーニングによる画像データのパターン認識による病理診断の研究開発が進みつつある。
  • 162 非侵襲的画像化技術がかなり増えてきた。
    (評価) 1
    正しい。
  • 163 診断はほとんどの場合、人間の医師と、パターン認識を基本にしたエキスパートシステムとの連携で行なわれている。
    (評価) 5
    診断はほとんどの場合、人間の医師のみによって行われる。
  • 164 通常医師は知識ベースのシステムを調べ (たいてい双方向の音声コミュニケーションを使う)、システムは自動化された指示、最新の医学研究、実践ガイドラインなどを提供してくれる。
    (評価) 5
    #163と同様。
  • 165 患者の障害の記録は、コンピュータのデータベースに保存されている。
    (評価) 2
    日本の場合、行政的、プライバシー上の問題もあり電子カルテの病院間連携は進んでいないものの、おおむね正しい。
  • 166 他の多くの個人情報データベースと同様、こうした患者の記録に関するプライバシーの不安が、大きな問題として浮上している。
    (評価) 1
    正しい。
  • 167 医師はたいてい、触覚的インターフェイスを備えた仮想現実環境で腕を磨いている。これらのシステムは、たとえば手術のような医療処置の視覚的、聴覚的、触覚的体験をシミュレートするものだ。
    (評価) 4
    VRによる医療教育はそれほど一般的であるとは言いがたい。
  • 168 模擬患者は、引き続き医学教育、医学生、さらには医者を体験してみたい人に利用されている。
    (評価) 4
    同上。

哲学

  • 169 機械の知能をテストするために1950年にアラン・チューリングによって提唱されたチューリングテストへの関心がふたたび高まりつつある。前にも触れたように、チューリングテストは、人間の判定員が、コンピュータと人間に端末を使ってインタビューする状況を観察するテストだ。もしその判定員が、人間と機械を区別できなければ、機械は人間と同レベルの知能をもっているということになる。
    (評価) 1
    正しい。
  • 170 コンピュータはまだこのテストをパスしていないが、この先10年か20年のうちにパスできるだろうという考えが強くなってきている。
    (評価) 2
    コンピュータが未だチューリングテストにパスしていないという予測は正しい。ただし、自然言語を人間と同じように扱えるコンピュータの実現にはまだ時間を要するだろうと考えられる。ただし、一般的な認識では、予想は強まっている。
  • 171 知的なコンピュータが知覚 (つまり意識) をもつがどうかが、真剣に考えられている。
    (評価) 2
    「機械の意識」に関する思考実験がなされている。
  • 172 ますます歴然としてきたコンピュータの知能が、哲学への関心に拍車をかけている。
    (評価) 1
    正しい。近年のディープラーニングの発展により、知能や心を扱う哲学への関心が高まっている。