シンギュラリティ教徒への論駁の書

“Anyone who believes that exponential growth can go on forever in a finite world is either a madman or an economist.” - Kenneth Boulding

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

人工知能の「知能」とは何か。指数関数的に成長しているのか。

近年では、特にディープラーニングの発達によって人工知能 (機械学習) の技術が目覚しい速度で発展しています。そして、人工知能技術の進歩は指数関数的であり、このままのペースで進歩が続けば、人間を越える人工知能が近い将来にでも出現するはずだ、とい…

シンギュラリティ再考:「人間を越える人工知能の開発」が「シンギュラリティ」ではない

このブログを書いている間に私に対して寄せられた議論と質問と反論を読むなかで、「シンギュラリティ」という言葉は、明確な定義がなく各自が勝手な意味で使用しており、シンギュラリタリアンの間ですらその定義に違いがあるため、それゆえ議論に大変な混乱…

人間に似た人工知能は、人間と似た制限を持つ(のでは?)

既に繰り返して述べている通り、私は「人間と同等の知能を持つ人工物」を実現することが不可能だと示されているわけではないことは肯定します。ただし、その「人工物」が実現されるまでには、現在喧伝されているよりも、ずっと長い期間を要するだろうと考え…

脳を模倣するアプローチ

直前の2節で、私は「脳の再現」と「機械学習」の手法による人工知能の実現の可能性について検討してきました。もちろん、汎用人工知能 (ヒトと同等の人工知能) を作成するためのアプローチは、この2つのみではありません。近年では、ある程度大まかに脳の核…

クラークの三法則に関する断章 (3) 「十分に発達して"いない"科学技術は、魔法と見分けがつかない」

今回は、クラークの三法則の最後の法則であり、おそらく最も広く知られているであろうこの法則を扱います。 『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。』 " Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic." この法則は…

クラークの三法則に関する断章 (2) 「不可能性の自己欺瞞」

今回も、前回に引き続いてクラークの三法則の第二法則を扱います。 『可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされるところまで進んでみることである。』 "The only way of discovering the limits of the possible is to venture a little way past…

クラークの三法則に関する断章 (1) 「可能でもできないコト」

テクノロジーの進歩に関する語りにおいて、頻繁に引用されるフレーズがあります。映画「2001年宇宙の旅」の原作者としても知られる、アーサー・C・クラークが述べた「クラークの三法則」です。 高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほ…

人工知能と天然知能の違い

これまで何度か述べてきた通り、私は必ずしも「人間と同様の知能を持つ人工物」が不可能であるとは考えていません。けれども、人間と同様の知能を持つ「人工物」は、おそらく現在の「コンピュータ」ではなく、また、それが実現されるまでには現在想像されて…

ことばの意味と画像:ディープラーニングは言語の意味を理解したのか

最近では、ディープラーニングの進歩によって、パターン認識の分野で大きな発展が起きています。特に、画像認識が急速に発達し認識率が高まったことによって、この手法を使い画像と言語を対応させることによって、言語の意味の理解も可能になるはずだ、とい…

機能と手段:潜水艦は泳げるのか

「コンピュータは考えることができるか?という問いは、潜水艦は泳げるか、という問いと同じようなものだ」 - エドガー・ダイクストラ 人工知能について語るとき、よく次のようなことが言われます。 「自動車は馬のように走るわけではなく、飛行機は鳥のよう…

「原理的には」人工知能は不可能ではない

近年の「シンギュラリティ」に関する議論では、この言葉が「人間の能力を超えた (汎用) 人工知能が作られるタイミング」を指すという誤解があるようです。けれども、これまで述べてきた通り、「シンギュラリティ」の元々の使用法から言えば、この言葉が意味…