イーロン・マスク氏が、2029年までに汎用人工知能 (AGI) が実現していなければ驚きだ、と述べたことが注目を集めています。
2029 feels like a pivotal year. I’d be surprised if we don’t have AGI by then. Hopefully, people on Mars too.
— Elon Musk (@elonmusk) 2022年5月30日
この発言に対して、認知科学者のゲイリー・マーカス、AI研究者のメラニー・ミッチェルらが反論し、イーロン・マスクに対して賭けを提案しています。賭けの条件として、マーカスは2029年までに人工知能には実行が不可能だと予想されるタスクを5つ挙げています。
- 映画を見て、何が起きているかを正確に説明すること (マーカスが主張する「理解度チャレンジ」) たとえば、登場人物は誰か? 登場人物たちの葛藤や動機は何か?
- 小説を読み、あらすじ、登場人物、葛藤や動機などについての質問に正確に回答すること
- あらゆる厨房で有能な料理人として働くこと (ウォズニアックのコーヒーテストの拡張)
- 自然言語による仕様書、または非専門家ユーザーとの会話を通じて、1万行以上のバグのないプログラムコードを生成すること (既存のライブラリを組み合わせることは含まない)
- 自然言語で書かれたあらゆる数学的証明を、形式的検証が可能な形に書き換えること
ゲイリー・マーカスは、もしも2029年までにこの5つのうち3つが実現された場合は10万ドル (約1300万円) を払うと述べています。マスクはこの賭けに応じていないため、この未来予測の賭けに関する詳細な条件は定められていません。(たとえば、映画や小説とはどれくらいの長さがあるものなのか、研究レベルのデモが実現すれば良いのか、など) とはいえ、私自身はこの不可能性の予測はかなり妥当であるように感じます。
たぶんマスク氏はこの賭けに応じないでしょうが、私は2029年にこの予想の結果を確認したいと思います。
さて、ここで私自身の予測も1つ挙げておきます。
- 2029年には、事務員を代替可能なほどに書類作成ができる人工知能は存在しない
つまり、任意のフォーマットの書類について、自然言語で指示された内容を適切に記入でき、また不明点については依頼者に質問ができるような人工知能は、2029年までには実現できない
追記
その後、ゲイリー・マーカスの挑戦はかなりの注目を集めています。カーネギーメロン大学のAI教授であるヴィヴェック・ワファは、賭けの金額を50万ドル (約6500万円) に増額することを宣言しました。また、作家でフューチャリストのケヴィン・ケリーは、レイ・カーツワイルとミッチ・ケイパーによるAGIに関する賭けと同様に、Long Betサイトでこの賭けを検証することを申し出ています。AIに関するカンファレンス World Summit AIは討論会の開催を提言しました。
イーロン・マスクはまだこの提案についていかなる返答もしていないようですが、せっかくなので私自身も賭けに乗りたいと思います。2029年にマーカスがこの賭けに負けた場合には、私も金 (ゴールド) 50g に相当する額を何らかの慈善団体に寄付します。