シンギュラリティ教徒への論駁の書

“Anyone who believes that exponential growth can go on forever in a finite world is either a madman or an economist.” - Kenneth Boulding

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

帰納的推論:(これまで)無限は存在しなかった

私たちが住む、現実の、この世界において、「無限大」は (これまで) どこにも存在しませんでした。(今までのところ) 無限は、ただ人間の頭の中、観念の中にだけ存在します。 図: y=1/xのグラフ 「シンギュラリティ」の本来の意味を説明するために、シンギュ…

収穫加速の法則批判 「恣意的なパラダイム」

カーツワイル氏の主張する宇宙の始まりからテクノロジーに至る指数関数的成長は幻影であり、このグラフは何ら意味のある内容を述べておらず、このグラフを用いて将来を予測することはできません。

指数関数とシグモイド曲線は区別できない

カーツワイル氏の未来予測それ自体とはあまり関係がない数学的 (あるいは哲学的) 事項を、もう1点指摘しておきます。 何らかの物理量の「過去の増加傾向」を観察して、それが指数関数的に増加していることが確認できたとしても、今後もその傾向が永続し指数…

収穫加速の法則批判 「減速する加速」

本エントリにおいては、「収穫加速の法則」は、「一定期間における『進歩量』の指数関数な増大」の意味で使用します。 前項で述べた、「収穫加速の法則」においてパラダイムが定義されていないという問題も無視しがたいものですが、けれども、実際のところ、…

指数関数に特異点はない

カーツワイル氏の未来予測の本質とはあまり関係がない、瑣末な数学的事項ですが1点指摘をしておきます。指数関数には、他の点と区別されるような特別な点、すなわち特異点は存在しません。シンギュラリタリアンは下記のようなグラフを使用して、ごく近いうち…

収穫加速の法則批判 「未定義のパラダイム」

カーツワイル氏が未来を予測する根拠である「収穫加速の法則」ですが、彼がその「法則」を例証していると主張するグラフが、以下の「特異点へのカウントダウン」と名づけられたグラフです。 なお、本エントリにおいては、「収穫加速の法則」は「『パラダイム…

多義的で曖昧な「収穫加速の法則」の定義

カーツワイル氏がシンギュラリティを予測する根拠である「収穫加速の法則」ですが、彼はこの「法則」を複数の意味で使っており、非常に多義的で曖昧な、対象が定量的ではなく分かりづらい「法則」となっています。 そもそも、(シンギュラリティに関する議論…

収穫加速の法則とは何か

ここまでカーツワイル氏のシンギュラリティ論に関する議論で、あらゆるテクノロジーが指数関数的に成長しているわけではないこと、指数関数的な成長が観察されているのは、ただ情報テクノロジーの隣接分野に限られることを説明しました。 けれども、「単独の…

情報の持つ不思議な性質

前回のエントリでは、指数関数的な成長はただ「情報」を扱うテクノロジーに限られた現象であると述べました。 現代の社会では、既に「情報」が広く扱われて売買されており、情報産業は既に巨大な分野になっています。けれども、改めて「情報」について考えて…

指数関数的成長はごく稀である

前々回のエントリで、飛行機の巡航速度、充電池の容量、そしてエネルギー消費量とナノテクノロジーの特許数の推移について取り上げてきましたが、そのどれを取っても必ずしも指数関数的な成長は観察できませんでした。上記以外にも、指数関数的な成長をして…

指数関数的に成長する無知

指数関数的な成長の議論において、カーツワイル氏 (あるいはシンギュラタリアン) は、非常に重要なポイントを見落としています。知識が指数関数的に増加するにつれて、無知も指数関数的に成長していく場合があるということです。 カーツワイル氏は、ゲノムの…

ほとんどのテクノロジー成長は指数関数的ではない 2

前回のエントリで述べた通り、「あらゆるテクノロジーが指数関数的な成長を遂げる」という観察が、カーツワイル氏による主張の根本原理となっています。けれども、ほとんどのテクノロジーにおいて指数関数的な成長は見られません。

ほとんどのテクノロジー成長は指数関数的ではない 1

カーツワイル氏は、あらゆるテクノロジーは指数関数的に成長していると主張しています。(『ポスト・ヒューマン誕生』 p.24, p.87) *1 けれども、現実の世界においては指数関数的な成長が観察できるテクノロジーは多くありません。また指数関数的に成長するテ…

カーツワイルのシンギュラリティ説とその批判

前回のエントリで述べた通り、レイ・カーツワイル氏のシンギュラリティ説は、必ずしもそれ以前のシンギュラリタリアンの説を踏まえたものとは言えません。けれども、カーツワイル氏の説は最も広く普及しており、現在シンギュラリティについて論じる上で議論…