2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧
前節において、半導体集積回路に関する「ムーアの法則」を取り上げ、近年では停滞しつつあることを指摘しました。また、カーツワイル氏の主張する「収穫加速の法則 = 拡張ムーアの法則」についても、実証的・論理的に、今後も必然的に継続されると信じる根…
本論では、技術開発の将来性に対するネガティブな見通しばかり述べていますので、少しばかり前向きな話もしておきましょう。 私は、おそらく2020年代初頭に半導体ロジックメーカー各社が微細化と集積化のペース (狭義のムーアの法則) の維持を断念し、公式に…
そろそろ、人工知能の真実を話そう 作者: ジャン=ガブリエルガナシア,伊藤直子,小林重裕 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/05/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る この本の著者であるガナシア氏は、パリ第6大学のコンピ…
よくよく考えてみると、私たちはトランジスタを構成する半導体 (シリコン) という物質に対して、極めて都合の良い要求をしていると言えます。 以前にも述べた通り、トランジスタはスイッチです。つまり、電源オフの間は電気が溜められ、オンになると電気が流…
ムーアの法則の終了後、次に来たるべき「パラダイム」として、ここ数年、量子コンピュータが盛んに取り上げられています。特に、米Google社傘下のD-wave社が生産、販売している量子コンピュータの名前は、おそらくテック系のメディアをチェックしている人で…
最新テクノロジーに関するインターネットメディアの報道を見ていると、多数のテクノロジーの研究開発が進んでおり、明日にでも研究室という滑走路を離陸して、市場の大空へ飛び立って世間に普及するかのように喧伝されています。 けれども、実際に技術開発に…
このエントリは少し長くなってしまったため、最初に結論を述べておきましょう。 『(拡張) ムーアの法則』の過去の実績は、将来に渡ってそれが継続するということの証明にはならない (拡張) ムーアの法則は自然法則ではなく、将来に渡って単一の基準で継続す…
自然科学や工学分野には、さまざまな法則や経験則が存在しています。けれども、「ムーアの法則」と一般的な科学・工学法則とを比較すると、やや異なる性質を持っていることが分かります。ムーアの法則は歴史性を、つまり人間の意思や目的、外的環境によって…
ここで、(狭義の)ムーアの法則の限界、すなわち半導体プロセスの微細化の限界について述べておきます。予め断わっておきますが、このエントリは、集積回路のトランジスタ密度向上について述べた(狭義の)ムーアの法則に関する限界であり、カーツワイル氏が主…
小鳥遊りょうさん (@jaguring1) から、何件か私の記事へのコメントを頂きましたので、いくつかの点、主に「特異点へのカウントダウン」のグラフと「収穫加速の法則」について返信します。 べき関数か指数関数か まず渡辺さんは「両対数グラフで直線になれば…
シンギュラリティに関する懐疑論を書いていると、しばしば「シンギュラリティが発生しないという証拠を示せ」「○○という技術が実現不可能であるという根拠を、あなたは挙げられないじゃないか」という反論を受け取ることがあります。 けれども、このような主…
前回のエントリでは、「ムーアの法則」の定義を確認し、半導体業界による「プロセスルール」の微細化はこの法則を論じる上では不適切な値であることを述べました。 ムーアの法則を「トランジスタの集積密度の指数関数的向上」という意味として捉えるならば法…
ここで、今までも何度か取り上げた「ムーアの法則」について、改めて検討します。 この言葉も、「シンギュラリティ」や「収穫加速の法則」といった用語と同様にさまざまな意味で用いられており、コンピュータの性能やコスト効率が指数関数的に向上するという…
第3章でカーツワイル氏の指数関数的なテクノロジーの成長に対する事実認識の誤りを、第4章では「収穫加速の法則」の定義のあいまいさ、非論理性と実証的基盤の欠如に関して批判してきました。
科学技術の指数関数的な成長を予測する「収穫加速の法則」を支える原理として、次のような主張がされています。 「一つの重要な発明は他の発明と結びつき、次の重要な発明の登場までの期間を短縮し、イノベーションの速度を加速する。」 なるほど確かに、直…
今年5月、世界最強と言われる囲碁棋士・柯潔氏と、Google傘下のDeepMindが開発する人工知能(AI)「AlphaGo」による対局で、AlphaGoが柯潔氏に対して3連勝を収めて注目を集めました。 また、日本でもプロの将棋棋士とAIの対戦が2012年から開催されていますが…
これまでも度々取り上げた、カーツワイル氏が宇宙、生命と人類史の指数関数的成長を例証したと主張するアイコニックなこのグラフですが、このグラフに対する批判もまとめておきます。 そもそも、「生命」、「人類史」と「テクノロジー」を時間という単一の指…
カーツワイル氏は、コンピュータや機械学習などのみの単独のテクノロジーだけが指数関数的に成長すると主張しているわけではありません。そうではなく、「収穫加速の法則」に従い、「パラダイム・シフト」が発生するまでの間隔が指数関数的に短縮されており…
先日、あるシンギュラリタリアンの方とネット上で議論をする機会があったのですが、議論を通して彼らが何を考え、どのような内的な論理で「収穫加速の法則」を捉えているのかを理解できたように感じています。 そして、なぜ、これまでの私の議論がシンギュラ…
カーツワイル氏が宇宙、生命、人類史とテクノロジーに渡る指数関数的な成長を示した「収穫加速の法則」のグラフについて、事象の発生間隔が指数関数的に短縮されるという結論を示すため、「パラダイム」が恣意的に選択されている、という批判を既に述べまし…