シンギュラリティ教徒への論駁の書

“Anyone who believes that exponential growth can go on forever in a finite world is either a madman or an economist.” - Kenneth Boulding

2018-01-01から1年間の記事一覧

翻訳:レイ・カーツワイルのあいまいな未来予測

この文章は、アメリカン・サイエンティスト誌の元編集長ジョン・レニー氏が、2010年11月にIEEE Spectrumのサイト上で発表したエッセイ"Ray Kurzweil’s Slippery Futurism"の翻訳です。 レイ・カーツワイルのあいまいな未来予測 今日、もしも自分のコンピュー…

カーツワイル氏の将来予測についての考察

以前の2つの記事で、私は1999年時点でのカーツワイル氏による2009年、2019年の予測を検討しました。 全体を通して予測の印象を述べると、以下の通りです。 コンピュータ関連のテクノロジー自体に関する予測は先見の明がある テクノロジーの使われ方に関する…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2019年 (結果)

こちらは、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、20年後 (2019年) の将来予測の検証です。本文は、以下の記事をご覧ください。 概要 注意事項 予測文の区切りは、意味の区切り…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2009年 (結果)

こちらは、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、10年後 (2009年) の将来予測の検証です。本文は、以下の記事をご覧ください。 概要 注意事項 予測文の区切りは、条件を合わせ…

書評:来世としての『全脳エミュレーションの時代』(ロビン・ハンソン)

全脳エミュレーションの時代(上):人工超知能EMが支配する世界の全貌 作者: ロビン・ハンソン,井上智洋,小坂恵理 出版社/メーカー: エヌティティ出版 発売日: 2018/03/01 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 全脳エミュレーション…

未来予測をどう読むか

これから先の記事で、カーツワイル氏による過去の将来予測を取り上げ、彼の「収穫加速の法則」を元にした予測の精度を検証してみたいと考えています。ただし、本題に入る前に、未来予測の検証において、注意しておくべきことを挙げたいと思います。(これには…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2019年

以下の引用は、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、20年後 (2019年) の将来予測です。 予測の評価結果は、以下の記事をご覧ください。 コンピュータ コンピュータはほとんど…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2009年 (2)

以下の引用は、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、10年後 (2009年) の将来予測の後半部分です。 予測の詳細な検証は、後の記事をご覧ください。 ビジネスと経済 ときおり修…

カーツワイル氏の過去の予測を検証する ─ 2009年 (1)

以下の引用は、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏が、1999年 (邦訳は2001年) の著書『スピリチュアルマシーン』の中で発表した、10年後 (2009年) の将来予測の前半部分です。 予測の詳細な検証は、後の記事をご覧ください。 コンピュータ 時は2009年。…

翻訳:シリコンバレーのシンギュラリティ大学はいくつかの深刻な現実の問題を抱えている

この文章は、Bloomberg Businessweekの記事、"Silicon Valley’s Singularity University Has Some Serious Reality Problems" の翻訳です。 シリコンバレーのシンギュラリティ大学はいくつかの深刻な現実の問題を抱えている Googleからの資金供給の喪失、暴…

カーツワイル氏の予測的中率は本当に86%なのか?

カーツワイル氏は、1990年代から未来予測を発表しているため、一部の予測の期限は既に到来しています。彼の予測手法は、直近の過去におけるテクノロジーの進歩のトレンドを、未来へと外挿するという手法です。それゆえ、カーツワイル氏が過去に発表した予測…

カーツワイル氏の不老不死に関する何度も何度も外れた予言

カーツワイル氏は、20年後には人類の平均寿命は100歳を超え、30年後には120歳を超えると主張しています。 ただし、これは1999年の『スピリチュアル・マシーン』の中の予測です。つまり、ここで言われている「20年後」は2019年、「30年後」とは2029年を意味し…

予測をするのは難しい。未来についてはなおさらだ。

ニューヨークヤンキースの偉大な監督ヨギ・ベラ (大リーグの長嶋茂雄さんみたいな人) が言う通り、予測をするのは難しく、特に未来についての予測はなおさら難しいものです。未来予測は、ほとんど外れます。これは、よく指摘される「30年以内に石油が枯渇す…

翻訳:ロドニー・ブルックス氏の将来予測

この記事は、ロドニー・ブルックス氏が自身のブログで発表した記事、"My dated predictions"の抄訳です。文意の変わらない範囲で意訳および省略、要約している部分があります。原文もご覧ください。 目次 私の将来予測 予測のルール 簡単なことと困難なこと …

まとめ —シンギュラリティ教徒への論題—

ここまで、約7か月間(!)に渡って、主にカーツワイル氏の主張するシンギュラリティ論の根拠について検証してきました。このブログ、『シンギュラリティ教徒への論駁の書』で取り上げた論点は、非常に多岐に渡っています。けれども、私のシンギュラリティに…

フェルミのパラドックスに対する最もシンプルな答え

引用元:Hubble Space Telescope Images | NASA カーツワイル氏によれば、知的生命体がシンギュリティを迎えた後、機械と融合した知性が光速ないし亜光速、もしくは超光速で宇宙へと拡大していき、宇宙が「精霊」で満たされると言われています。この「予測」…

カーツワイルの「宇宙の覚醒」とは何か

引用元:Hubble Space Telescope Images | NASA 人類がシンギュラリティを迎えた後、カーツワイル氏は、機械と融合した人類の知性が光速 (ないし亜光速)であらゆる物質を計算装置に変化させながら、宇宙へ拡大していくと述べています。そして、いずれは宇宙…

書評:『Deep Learning with Python』は、人工知能と人間の知能への深い洞察を含んだ良書だった

Deep Learning with Python 作者: Francois Chollet 出版社/メーカー: Manning Pubns Co 発売日: 2017/12/22 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 本書は、Kerasを用いたディープラーニングの基礎への入門書です。著者のフランソワ・ショレ…